機動隊の派遣手続き「違法」 沖縄米軍ヘリパッド工事で高裁判決

山下寛久、松島研人
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 亜熱帯の森に囲まれた、100人ほどが暮らす集落に米軍施設がやってくる。

 反対派の抗議活動と当局側との衝突が注目を集めた、沖縄県東村高江周辺への機動隊派遣。

 その派遣を「違法」とする初めての判断を名古屋高裁が7日に下した。

 倉田慎也裁判長は、当時の愛知県警本部長が県公安委員会の承認なしに「専決」で派遣を決めた手続きを違法だとした。

 そのうえで、大村秀章愛知県知事に対し、本部長に約110万円を支払わせるよう命じた。

 「原判決を次の通り変更する」

 倉田裁判長が主文を読み上げると、傍聴席から「よし!」と声が上がった。

 拍手の中、原告や原告側弁護士らは互いに抱き合い、涙を流した。

 立ち上がり、感極まって叫ぶ人もいた。

 原告は愛知県民ら約200人。

 米軍のヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設工事の警備に県警の機動隊員が2016年7~12月に派遣されたことについて、「派遣は自治体警察の趣旨に反した違法なもの」などとして、警察官給与など約1億3千万円の損害賠償命令を求めていた。

 昨年3月の一審・名古屋地裁の判決は、派遣決定は「異例または重要」なものについて県公安委の事前承認を求める事務規程に反していた可能性があるとしつつ、後に公安委の承認を得たため違法とはいえないなどとして請求を棄却。原告側が控訴していた。

 名古屋高裁の倉田裁判長は、一審判決を変更。

 派遣をめぐっては政治的・社会的に対立があり、反響が大きいなどとして、事前承認が必要だったと指摘。

 事後報告を受けた公安委員は「決定が専決で行われたことの手続き的違法」について考えが及んでおらず、実質的審議による同意・追認とは評価できず、専決で決めたのは違法だとした。

 そのうえで、隊員の時間外勤務手当分の賠償を命じた。

 一方で、現地での活動内容を理由に派遣自体が違法だとする原告側の主張は退けた。

 原告側弁護団によると、同種の訴訟は東京、福岡でも起こされたが、原告勝訴は今回がはじめてという。

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 原告側弁護団事務局長の長谷川一裕弁護士は会見で「住民の代表として警察を監理すべき公安委員会の形骸化が浮き彫りになった」と判決の意義を述べた。

 弁護団によると、機動隊員を派遣した6都府県警のうち、派遣の専決が許されているのは愛知県のみ。「県警本部長に丸投げで専決を認めている現状に早急にメスを入れていただきたい」と話した。

 会見には原告団長の具志堅邦子さん(66)=名古屋市緑区=も同席した。

 沖縄県名護市出身。大学進学を機に愛知県にやってきた。長年米軍基地への反対運動に従事し、高江での抗議にも参加した。

 2016年7月、機動隊員が沖縄の生活道路を埋め尽くす様子を動画配信サイトで見た。

 沖縄県公安委員会の要請で投入された愛知を含む6都府県警察の機動隊員は、数百人。大阪府警の隊員が「土人」と暴言を吐いて問題となった。

 「沖縄の人はなぜこんなに苦しまないといけないのか」。涙がこぼれた。

 同年秋、高江に向かう中で自らも検問にあった。

 車両には愛知県警と書かれていた。隊員たちは、うつむいて問いかけには応じなかった。後ろめたいのか、と思った。

 「愛知県民として払った税金が機動隊に使われていた。いや応なく郷里への加害に加担させられた」と憤りが募った。

 訴訟では原告団長に就いた。

 判決は現地での活動内容を理由に派遣自体を違法とすることはできないとした一方、抗議テントや反対派の車の撤去などの職務内容について、適法な範囲を超える部分があったことを否定できないなどとした。

 「安易に機動隊を派遣できないということが約束された。本土と沖縄の関係の転換へ一歩を踏み出す、新しい力になる」

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 愛知県警は、萩原生之(たかゆき)監察官室長名で、「判決内容を検討した上、今後の対応を決めます」とコメントした。

 愛知県大村秀章知事は7日、記者会見で「内容を具体的に承知していないのでこの時点ではコメントできない。弁護士とよく相談して内容を精査した上で適切に対処したい」と述べた。(山下寛久、松島研人)