ノーベル平和賞にフィリピンとロシアのジャーナリスト 委員会が発表

オスロ=金成隆一
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 ノルウェーのノーベル委員会は8日、2021年のノーベル平和賞を、いずれも強権的な政権への批判を続けてきた、フィリピンジャーナリストマリア・レッサさん(58)と、ロシアの独立系リベラル新聞「ノーバヤ・ガゼータ」の編集長ドミトリー・ムラトフさん(59)に授与すると発表した。

 ノルウェー・ノーベル委員会のライスアンデシェン委員長は発表の会見で「民主主義と恒久的な平和の前提である表現の自由を守るために努力してきた」と2人の実績をたたえた。

 さらに、2人は「民主主義と報道の自由がますます不利な状況に直面している世界」で、表現の自由のために闘う「全ジャーナリストの代表だ」と述べた。

 委員会の発表によると、レッサさんはフィリピンで権力の乱用や暴力の行使、勢いづく権威主義を告発してきた。12年に調査報道を目的としたネットメディア「ラップラー」を共同で設立し、現在も代表を務めながらジャーナリストとしても活動している。

 麻薬犯罪の取り締まりのために容疑者の殺害を容認するなど、強権的な政権運営を進めたドゥテルテ大統領に対し、一貫して批判的な姿勢で報じてきたほか、ソーシャルメディアによるフェイクニュースの拡散や世論操作についても伝えてきた。現政権下で少なくとも2度逮捕されている。

 ロシアのムラトフさんは1993年、ノーバヤ・ガゼータを創刊した一人で、95年以降、計24年間編集長を務めてきた。創刊以来、汚職や捜査当局の暴力や権力行使、選挙違反など、様々な分野で批判的な記事を書き、プーチン政権にも批判的な姿勢を貫いている。

 ライスアンデシェン氏は、同紙は「ロシアで最も独立した新聞」で、「事実に基づくジャーナリズムとプロとしての誠実さ」は、他のメディアではほとんど伝えられないロシアの側面についての重要な情報源となっている、と評した。

 また、委員会は、同紙が恒常的に脅迫や暴力を受けてきた点を強調。ロシア南部チェチェン共和国での人権侵害の実態に迫り、06年に自宅アパートで射殺されたアンナ・ポリトコフスカヤさんを含め6人の記者が殺害されてきた点も指摘した。こうした状況下でも「新聞の独立した方針を放棄していない」と評した。

 同紙はソ連最後の指導者ゴルバチョフ元大統領が出資したことでも知られる。ゴルバチョフ氏は90年に受賞したノーベル平和賞の賞金でコンピューター20台を提供したという。(オスロ=金成隆一)