乳児からデジタル漬けはSFか 本谷有希子さん、育児の苦悩そのまま

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聞き手・田渕紫織
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 小さな子どもに、スマートフォンやタブレットといったデジタル機器をどこまで触れさせてよいのか。親にとって悩ましい問題です。劇作家・小説家の本谷有希子さんはこの夏に出版された小説「あなたにオススメの」の一編で、この問題に向き合いました。

 ある人気保育園は政府の方針に沿って、0歳からスマホや動画に触れることを推奨し、嫌がる子は「オフライン依存」とされて受診を勧められる――。この一編、「推子(おしこ)のデフォルト」を読んだ記者は心がざわつきました。子どもに動画を見せる罪悪感のもとを言い当てられた気がしたからです。5歳と0歳を子育て中の本谷さんに、狙いや悩みを聞きました。

――乳児の時からとにかく長時間スマホや端末に向き合うことが推奨されるという、どきっとする設定です。どうやって着想されたんでしょうか。

 私自身が「最近たった5分でも何もせずぼんやりするということができなくなったな」「物思いにふけるっていうこともできない体になってしまった」と思ったことがありました。スマホとデジタル空間が、もう体の一部のようになっていて。

 最初は超デジタル化した世の中で「うちの子、物思いにふけっていて怖い」と騒ぐ家族の話を書こうと思っていましたが、コロナ禍が始まって社会にいろんな変化が起きて、もう少し大きなイメージが湧いてきました。

――日々育児をされている中で、子どもとデジタルの関係で気になることはありますか。

 親としてはどう付き合っていくべきか真っ当に悩まされますし、ずっと選択を迫られ続けるのだと思います。

 気づくともうズルズルと、デジタルツールは日常の中に入り込んでしまっています。

 何年か前までは、自分で考える力や感受性が失われていくのではないかと思って避けていました。でも今はもう世界中の物事を知ることができたり人脈が築けたりして、メリットのほうが上回ってしまった気がして、子どもから遠ざけるという昔のやり方に固執する意味がなくなってきたのではと感じています。

 だから英才教育だと言って小さい頃からプログラミングをさせるといった親御さんたちも実際いらっしゃいますよね。

 私はそこまで積極的に与える側には乗りきれない一方で、「社会ではデジタルツールを使えないと通用しない人間になってしまうのではないか」という焦燥感もあります。

――作中に出てくる、デジタル機器は一切持たせない全寮制の学校についても、それはそれであまり肯定的には描いていませんね。

 この小説では、子どもが生まれた瞬間からネット漬けにして等質にするのがいいという考えがマジョリティー。もちろん今の我々から見たら正常ではありません。

 かといって、ただそのカウンターになっただけのマイノリティーも正常ではない姿として書いています。

 そうやってデジタル機器から遠ざけたところで、その学校にいる間はいいかもしれないけど、その状態で社会に出たときに落ちこぼれるかもしれない……。一方で、自分で考える力や感受性、人を思いやる気持ちなど、人間らしいことも手に入れてほしいと願ってしまいます。なかなか正解がない状態です。

 やっぱり、(デジタル空間とそれ以外の)どちらかだけで生きていくのは難しいんじゃないかという私の苦悩がそのまま表れている形ですね(笑)

「デジタル機器を使うか使わないかを自分で決められるギリギリの世代」と語る本谷さん。記事の後半では作品についての思いを語ります。

――小説の中でAIを「ええ愛」という当て字で表記されています。つい爆笑してしまいました。

 最初はアルファベットで表記…

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