刑務所っぽくない季刊誌、九州で創刊 掲載された受刑者は…

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島崎周
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 法務省福岡矯正管区(福岡市東区)が、受刑者や更生を見守る人たちを紹介する季刊誌「Lutone…」(ルトネ)を9月に創刊した。刑務所の中のことを多くの人に知ってもらいたい――。そんな思いが込められ、異色の誌面になった。

 「日本の夏、日本茶の夏」とタイトルが入った表紙には、湯飲みに入ったお茶を手にした女性が縁側に座っている。1枚めくると、見渡す限りの茶畑と青空が広がる写真がある。

 普通の雑誌とちょっと違うのは、「茶の栽培に携わる」と紹介された男性が、フードで顔を隠していることだ。50歳の受刑者だという。

 創刊号で取り上げたのは、鹿児島県湧水町にある鹿児島刑務所。1952年から刑務作業として、日本茶の栽培や加工をしてきた。男性は昨年9月からこの作業にあたっているといい、こう語っている。

 「二十代の頃は一生懸命働いていたのに、ギャンブルで失敗して、家族も何もかも全部失いました。(中略)とにかく大変なことは避ける生き方しかできなかった。楽な方、楽な方じゃないですけど。(中略)ここのお茶は農薬を一切使わず、草取りも手作業。しんどいけれど、楽な方へ逃げなくなったと思います」

 刑務所の近くにある温泉で、受刑者がつくった茶を販売する夫婦や刑務所職員の言葉も紹介されている。夫婦はこう話す。

 「(受刑者が)お茶を作ってることは知っていたけど、こんなに美味(おい)しいとはね。(中略)被害にあった方のことを思うと複雑だけれど、これからの人生を懸命に生きてほしい」

 指導する作業専門官は、受刑者の変化を語る。

 「一から教えることは大変ですが、作業を始めて二か月から三か月すると、日に焼けて体力もついて健康的になる。自信がついて、表情も明るくなって、最初に会ったときの印象とまるで違ってくるんです。(中略)お茶を育てるように自分自身を育てる。受刑者にはここで培った経験を自信にして胸を張って社会復帰してほしいですね」

 掲載された受刑者の男性は、できあがった誌面を手にして、感想をこうつづったという。「過去は変えることはできませんが、自分とその未来は変えていける。この冊子を読んで少しでも多くの方にそう思って頂ければ嬉(うれ)しいです」

 製作したのは、福岡矯正管区で刑務作業や教育を担当する成人矯正第2課の職員たち。今年4月に着任した課長の萱原(かやはら)広智(こうじ)さん(47)が中心となり企画した。取材や執筆、デザインも自分たちだけで手がけ、9月初旬に3千部を発行した。「Lutone」は、福岡など九州で使われる言い回し「○○するとね」が由来だ。

 イメージしたのは、おしゃれなカフェに置いてある雑誌や飛行機の機内誌。これまでも刑務所の対外向けの広報誌はあったが、受刑者がつくった製品を並べたカタログのようなものが多く、受刑者やその周囲の人が取り上げられることはあまりなかった。萱原さんは「刑務所らしからぬものをつくりたかった」と話す。

 ある出来事が背景にある。約20年前、初任地の北海道・旭川刑務所で、受刑者が作った靴を長年買いにくる高齢女性がいた。女性の夫が「履きやすいから」と使っていたといい、夫が亡くなった後も仏壇に供えるために買い続けてくれたという。

 横浜で勤務していた時には…

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