乾期を迎えた6月、アフリカ・ルワンダ西部カロンギ郡の空は薄い水色に晴れわたり、柔らかい日差しが景勝地キブ湖の湖面にきらきらと跳ね返っていた。標高約1460メートルにある湖を取り囲む急峻(きゅうしゅん)な丘の一画には、高さ数メートルに育ったコーヒーの木が茂っている。
コーヒー園に足を踏み入れると、足元で乾いたバナナの葉がザザザッと鳴った。地表を覆う葉が土壌の水分を保ち、雑草の成長も抑える工夫だ。標高が高く木陰の多い涼やかな園の中、農家のヤンファシジェ・セントマリーさん(50)がリズムよくパチパチパチとはさみで枝を切り落としていく。「剪定(せんてい)の仕方、土壌の守り方、肥料のやり方。全部教わった。生活は一変しました」
セントマリーさんは2017年まで、約800本の木から年200キロほどを収穫していたが、地域のコパカキ農協で品質向上の手法を学び、はるかに効率的に生産できるようになった。植樹もした結果、今年は2200本を超える木から8トンを収穫。5人の子どもたちの学費の心配はなくなり、土間だった自宅には床板を敷き、電気も引けるようになった。
ルワンダで27年前、80万人超が虐殺されました。セントマリーさんもその記憶に苦しむ一人。記事後半では、コーヒー生産を通じて笑顔を取り戻していく姿を描きます。
順風ばかりではない。昨年3…