「まさか」を起こさないためには 母子が犠牲になった小川で見た風景

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関根慎一
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 【福島】9月下旬、JR郡山駅から南東に約10キロ離れた福島県郡山市の田村地区に足を運んだ。山あいの集落の細い県道沿いには家々が点在する。たまに行き交う車の排気音が遠くから聞こえ、刈り入れを控えた田んぼは黄金色に輝いている。

 県道と並行するように流れる黒石川の幅は数メートル程度で、川に架かる小さな橋は7歩で渡れた。川の深さはせいぜい大人のひざ下くらい。澄み切った水に落ち葉が流れている。この川が豹変(ひょうへん)し、母子3人の命を奪ったことを想像することは難しい。「この川が、まさか」との思いだ。

 2019年10月12日夜、天栄村に住む母(当時36)と兄(当時10)、弟(当時7)は隣の地区から自宅に戻るため車で出発したところ、台風19号の大雨で増水した黒石川にのみ込まれた。川に転落したか、水に流されたとみられ、車と3人は川沿いの別々の場所で見つかった。車の発見場所近くにある県の水位計データによると、12日午後5時10分に氾濫(はんらん)が始まり、午後11時50分には護岸を1・2メートル越水する急激な増水だった。

 ただ、昔を知る地元住民にとっては危険を感じる「小川」でもあったようだ。県道沿いに住む田村地区の男性(80)は「昭和30年ごろ、この辺りに水が上がったことがある」と話す。2年前の台風の時も地元消防団は住民に避難を呼び掛け、市防災危機管理課の担当者は「黒石川沿いで水が上がりやすい危険箇所に消防団が出場し、通行車両や住民に状況に応じ、通行止めや迂回(うかい)を促すなどの安全確保活動をしていた」と話す。

 母子が巻き込まれた詳しい状況は今も明らかになっていない。大水にえぐられた護岸の復旧工事はすでに終わり、道沿いに「大雨時冠水 走行注意」との看板が新たに立てられた。

行政の手、届かない川も

 台風19号では飯舘村を流れ…

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