ノーベル賞生んだ「マコト、温度刺激を加えてみて」 自然科学3賞

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 ノーベル物理学賞に、米プリンストン大の気象学者、真鍋淑郎さんら3氏が選ばれた。日本出身の研究者が受賞するのは、2019年の吉野彰さん以来28人目。授賞式は12月10日で、新型コロナウイルスの感染拡大が続いていることから、メダルや賞状はそれぞれの国で受け取る。医学生理学賞と化学賞もあわせ、今年の自然科学系3賞を振り返る。

 医学生理学賞は、体に備わった感覚センサーに関する業績で米国の2氏に贈られる。英語の「HOT」が辛みと熱さの両方を意味する通り、辛みに反応するセンサーと温度を感じるセンサーが共通なことを発見した。

 生理学研究所(愛知県岡崎市)の富永真琴教授は、受賞対象の主な論文8報のうち2報に名を連ねる。受賞が決まった米カリフォルニア大サンフランシスコ校のデービッド・ジュリアス教授の下で1996年から約3年半、博士研究員として研究した。

 「唐辛子を食べると口の中が熱くなる。辛みの受容体(センサー)は、熱でも活性化するのではないか。マコト、温度刺激を加えてみて」

 ジュリアスさんから促されて刺激を加えると、受容体が活性化した。辛さや痛みを感じる受容体が熱も感じると分かった瞬間だ。富永さんは「長い科学者人生の中で一番感動した」と振り返る。受賞発表の中継動画を見て「受賞対象になった仕事に貢献できた。科学者としてこれに勝る喜びはない」と喜んだ。

 岡山大の山下敦子教授も当時、とても興奮したのを覚えている。「人が何によって温度を感じているのかをたんぱく質分子で説明した。自分が体感できることで説明されたことが驚きだった。うどんに七味をかけるとカーッと熱くなるのは当然だったんだなと」

 共同受賞する米スクリプス研究所のアーデム・パタプティアン教授は、細胞の表面を細い針でつついたときに反応する「触覚センサー」を見つけた。

 鳥取大の日野智也准教授は「この研究により、人間の体が温度を感知し、触覚などを生じる仕組みが明らかになった」。名古屋大の清中茂樹教授は「こうした画期的な研究を皮切りに、感覚受容の仕組みの理解が急速に進んだ」と評価した。

 今回の発見は人間の「痛覚」にも通じる。痛みのメカニズムはまだわかっていないことも多いが、慢性疼痛(とうつう)などの治療法や新たな麻酔薬の研究が進みつつあるという。東京大の濡木理教授は「21世紀初頭に始まったヒトゲノム解析により、重要なたんぱく質の遺伝子が次々発見されたが、ほぼ底をついた感がある。今後のノーベル賞は、生命現象のメカニズムの解明と医療などへの応用に光が当たるだろう」と語った。

■物理学賞の真鍋さん「シミュ…

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