第3回「10万年後」を考える子どもたち 核ごみは町民だけの問題なのか

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伊沢健司
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 「賞品にデジカメがあるんだって。ほしいよね」

 夏休み前の学校からの帰り道、北海道寿都町の小学5年生、三木心乃香(このか)さん(11)と田嶋柚子(ゆず)さん(11)は、小学生を対象にした手作り新聞コンテストの話題で盛り上がった。「賞に選ばれて表彰式で札幌に行けたらBTSのグッズも買いたい」。応募したいとそれぞれの親に相談した。取材のテーマは決まっていた。「核のごみ」だ。

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 国内の原発が動き始めてから半世紀以上経つなか、人口約2900人の漁業のまちで、初めて動き出した最終処分場の選定プロセス。トップが下した「政治的判断」に、町民の賛否は割れている。今月21日告示、26日投開票の町長選を前に、この1年の「核のごみ」をめぐる議論を3回にわたり追う。

 寿都町では、片岡春雄町長(72)が昨年10月、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた文献調査に応募した。地域経済を立て直すため、2年で最大20億円の交付金を期待した。処分場が決まらない核のごみの問題に「一石を投じる」とも繰り返した。

 これに対し、文献調査に反対する水産加工業者らが中心となって「子どもたちに核のゴミのない寿都を!町民の会」を結成した。応募の撤回を求めるとともに、応募前の住民投票の必要性を訴えた。だが、片岡町長から「町民の賛否は肌感覚でわかる」と言われ、受け入れられなかった。

 心乃香さんの母親、信香(のぶか)さん(49)は町民の会の共同代表だ。柚子さんの母親とも一緒に調査反対を訴えてきたため、娘たちが核のごみに関心をもつことも理解できた。ただ、新聞づくりと聞いて、昨年の苦い経験がよみがえった。

 片岡町長が文献調査に応募する前に開いた住民説明会。心乃香さんと柚子さんが行きたいというので連れて行ったところ、2人が会場で片岡町長に「核のごみは安全なんですか?」などの質問をした。信香さんは説明会後、「子どもに質問させるのはヤラセだ」という他の参加者の声を聞いた。「子どもたちは自分で考えて準備して質問したのに……」と落ち込んだ。

 それでも、新聞をつくりたいという子どもたちの意思を尊重することにした。

 2人はまず、自分たちが知りたいことや、町民に考えてほしいことを紙に書き出した。「核のゴミのおそろしさ」「寿都のすばらしさ」「100年後、10万年後どうなっているのか」。町長のほか、現地事務所を設けた原子力発電環境整備機構(NUMO)の職員、文献調査に反対する地質学者にもインタビューした。

 さらに、商店や団地を回り、町民13人に会った。「これからの寿都はどうなってほしいですか?」との質問には「核のごみのお金で町民の暮らしが豊かになってほしい」「自然豊かな寿都を守ってほしい」という答えが返ってきた。

 心乃香さんは「ふだん声を出…

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