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増えた病床、保健所対応には遅れ 大阪、第5波の成果と課題

寺尾佳恵
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 新型コロナウイルス対応の緊急事態宣言大阪府で解除されて1週間が過ぎた。第5波の感染者は春の4波を大きく上回ったが、高齢者のワクチン接種が進み、病床などが拡充され、死者や重症者は減った。一方、保健所から感染者への連絡が滞る課題も残った。(寺尾佳恵)

抑えられた死者と重症者 ワクチン・病床増の効果

 「重症病床を増やしたので、5波(での死者や重症者)は抑えられた」

 吉村洋文知事は9月28日の新型コロナウイルス対策本部会議でそう語った。

 大阪の新規陽性者は8月6日には1310人と、4波のピークの1260人(4月28日と5月1日)を上回り、最多を更新。勢いは止まらず、9月1日には3004人に達した。

 感染拡大の一因となる人流を抑制するため、8月2日には緊急事態宣言が出され、府は飲食店に営業時間の短縮や酒類提供の自粛を要請した。ただ、4波の宣言時に行った大規模商業施設への休業要請には踏み込まず、午後8時までの営業を認めた。無観客だったイベントも収容率50%以内かつ上限5千人とした。

 その結果、繁華街の人流は4波の宣言時(4月25日~6月20日)より減り幅が小さかった。ソフトバンクの子会社「アグープ」のデータを見ると、JR大阪駅周辺の人出は、今回の宣言時(8月2日~9月30日)は前回よりも、平均で約27%増加していた。

 感染者数が4波を超えても、人流抑制策を4波ほど強化せずにすんだ背景には、高齢者へのワクチン接種が進み、病床が確保できていたことがある。

 4波では、確保する病床数を重症患者数が超え、最大で約1万5千人が自宅療養を余儀なくされ、自宅で19人が亡くなった。

 病床が逼迫(ひっぱく)した4月中下旬、吉村知事や副知事が8病院に直接足を運んで増床を依頼。府幹部は「ここでのお願いが5波で生きた」と振り返る。重症病床は4波当初の224床から605床へと大幅に増え、宿泊療養施設も約4千室から約8400室に倍増した。

 5波(9月24日時点)の重症化率と死亡率を4波と比べると、3・2%から1・0%、2・8%から0・2%に激減した。

「第6波来る前提で」 保健所通さない治療・療養の仕組み作り急ぐ

 一方、保健所の逼迫状態は変わらなかった。

 大阪市保健所では、4波の反省を生かし、感染経路や濃厚接触者を確認する疫学調査を簡素化するなどしていた。しかし、5波でも、保健所が患者に容体を聞き取るまでに4日かかる事態が起きた。府幹部は「大阪市のように1日1千人台の感染者が続いたら、業務は回らない」と漏らす。

 大阪市とは別の自治体の保健所幹部も「(感染力が強いとされるデルタ株による)5波は発症前後の早い段階で2次感染が広がり、入院や宿泊療養の調整に遅れが出た」と振り返る。限られた職員で積極的な疫学調査をどの段階までやるかが、今後の課題だという。

 保健所による入院や宿泊療養の調整が遅れると、重症化を防ぐ抗体カクテル療法が行えなくなる恐れもある。発症から7日以内の投与が求められているからだ。

 6波に向け、府は保健所を通さずに治療や療養につなげる仕組みづくりを急ぐ。

 10月から抗体カクテル療法が診療所でも認められ、府はコロナ感染の有無を調べている約1400診療所に、同療法を実施するよう要請している。検査を行った病院で同療法を実施してもらうなどして、保健所の負担を減らすのが狙いだ。往診での実施も働きかけていくという。

 大阪市民向けのコールセンターも設置した。保健所から3日連絡がなかった感染者が電話すると、宿泊療養施設への入所を手配してもらえる。

 9月30日には、大阪市国際展示場「インテックス大阪」に500床の大規模医療・療養施設が開設された。無症状や軽症者の利用を想定し、保健所から連絡がなくても使える「避難所」として扱う。感染状況が落ち着いているため、現在は受け入れを行っていないが、6波に備えて、今後1千床まで拡大する。

 対策本部会議では、「6波は年末年始にかけて準備が必要」(府専門家会議の朝野和典座長)といった見通しも出た。吉村知事は会議後の会見で、こう強調した。「いかに早く治療を行うか、ここに尽きる。6波が来る前提で、対応できる態勢を整えたい」(寺尾佳恵)