JR木次線を元気に 大学生らの応援活動始まる

杉山匡史
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 島根県雲南市で9月、大学生らの柔軟な知恵を借りてJR木次線の魅力を再発見し、会員制交流サイト(SNS)を通して発信する応援プロジェクトが始まった。JR西日本が観光トロッコ列車「奥出雲おろち号」の2023年度の運行終了を示し、木次線存続の行方も注目されている。危機感を抱く沿線自治体の一つである同市が、木次線盛り上げを探る試みとして取り組む。

 市うんなん暮らし推進課によると、来年3月までの取り組みだ。メンバーは大学やSNSなどで企画を知った島根大の4人と県立大の1人。このうち3人は高校時代に通学などで木次線を利用していたという。

 月2回程度集まり、市内7駅を中心に地元の案内役らと巡って、見たり感じたりしたことなどを写真と共にSNSで発信していく。年内の中間報告を経て、将来を見据えた具体的なアイデアを提案する。実施に向けて6月補正予算で事業費50万円を組んだ。

 アイデアにはインターネット検索で出てこない「足で稼いだ情報」も期待している。沿線自治体などで作る木次線利活用推進協議会でも共有し、広島県側との協議でも生かす考えだ。

 沿線を巡る活動の初回は9月25日にあった。加茂中駅(加茂町加茂中)に大学生4人(1人は欠席)と、教員の紹介で企画を知った県立高校生1人が集合した。参加の動機は「学んでいるまちづくりを実践して元気にしたい」「存続のために応援したい」など。県外出身の学生は「出身地も事情は同じで地元への参考にもしたい」と話した。

 リーダーで事業を請け負った、元市地域おこし協力隊員で学生らの活動を支援する社団法人コミュニティキャリアズの山下実里(みのり)代表(27)が「ただ情報を発信するのではなく、若い人に響くようなものを意識してほしい」と助言。徒歩と自転車組に分かれ出発した。

 徒歩組は、地元暮らしで歴史などに詳しい青木光男さん(61)の案内で、おろち号を下から見られることで有名な鉄橋や古風な消火栓などを回り、高台の共同墓地からは「エーゲ海の風景のよう」と地元で言われる景色を眺めた。

 昼食は手間を惜しまない飲食店で自慢のラーメンを味わい、買い物に困るお年寄りらのために設けられた店で買い物もした。木立や住宅を渡る風に涼しさを感じながら約5時間。地元の人だけが知る裏道をたどり、スマートフォンや若者に見直されている使い切りカメラで撮影した。

 最後は総括として、出発地の加茂中駅を中心に、通った場所などを付箋(ふせん)に書いて記録し、情報を共有した。

 雲南市出身で島根大教育学部2年の験馬(けんま)香穂さん(19)は「地域を盛り上げるためのつながりの大切さを実感した。これから様々な課題の発見や出会いがあると思う。大学生の発想を良い方に還元していけたら」と意気込みを見せた。

 JR西米子支社によると、木次線は宍道(松江市)―備後落合(広島県庄原市)の81・9キロを結ぶ。19年度の1日1キロあたりの平均利用者は190人で右肩下がりが続く。旅客運輸収入はJR西管内51路線で3番目に少ない。

 その中で今年6月、「おろち号」の運行終了が発表された。車両の老朽化などが理由だ。20年の利用者はコロナ禍で約6千人に落ち込んだが、前年は約1万3千人の利用があった。終了発表後は予約が取りにくい状況が続いているという。

 木次線への影響を及ぼすことは想定される。県内では18年3月に三江線廃止があり、県をはじめ、木次線沿線の自治体は危機感を抱いている。

 そうした中で始まった今回の試み。市の事業担当の加藤健一さん(46)は「盛り上がりと合わせて地域経済が回ることも大事。トロッコ列車に限定せず、若い人の感性で10年、20年後の利用を見据えた提案を期待している」と学生たちとの連携の意義を話す。(杉山匡史)