地元紙を飛び出した元歯科衛生士の52歳 記者が感じたすごみと覚悟

下地毅
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野口千恵さん(52) 地域の通信社を設立

 紀州と泉州のニュースを配信する通信社KINACO(キナコ、和歌山市十一番丁)を7月1日に設立して編集局長についた。

 野口千恵さん(52)は和歌山市生まれ。歯科衛生士と、アロマやハーブをあつかう植物療法士の仕事が長かった。そのころ、インターネットに悪口を書かれて深く傷ついた。「言葉で人は死ぬこともある。言葉で人に勇気をあたえる仕事をしたい」と思った。地元新聞社の記者に転身したのは50歳のときだ。

 私(下地)は、取材の現場でよく会う野口記者をながめていて、旺盛な取材意欲に感嘆しつつ、「危うさ」も感じていた。話を聞いて原稿を書くという「客観・中立」ののりをこえて、取材先の人と人とをつないで商品開発にたずさわったり、いっしょに企画を考えて準備から本番まで手伝ったりするからだ。大丈夫かな? ただし、なにかもめごとが起きたときに知らんふりをする自己保身としての「客観・中立」に逃げない姿勢がまぶしくもあった。

 予想どおりに1年ちょっとで地元紙を飛びだした。直後に、まちづくりの会社「紀泉ふるさと創研」に行動力を見こまれて誘われた。ここでの仕事をこなしつつ、「和歌山のよさを多くの人に伝えたい」とつくったのがKINACOだ。

 ここにすてきな人がいますよ、あそこでおもしろいことをしていますよと新聞社やテレビ局に教えるプレスリリースをつくるため、人に会い、話を聞き、要点を文章にしてというふるまいは新聞記者のころとおなじだ。動画をつくったり学生記者の育成に乗りだしたりとむしろ忙しくなった。

 そこらの記者でも「和歌山を元気にしたい」ぐらいは口にするだろう。野口編集局長が言うときは、みずから関わっていく点において覚悟がちがう。(下地毅)