岸田首相「金融所得課税は当面触れない」 総裁選での発言から後退

森岡航平
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 岸田文雄首相は10日午前、フジテレビの討論番組で、株式配当などの金融所得への課税強化について、「当面は金融所得課税に触ることは考えていない」と発言した。自民党総裁選では、格差是正につながるとして金融所得課税の見直しを打ち出していたが、軌道修正した。

 首相は番組の中で、金融所得課税の見直しについて「総裁選挙のときに挙げた一つの選択肢」としたうえで、「そこばかり注目されて、すぐやるんじゃないかという誤解が広がっている。これはしっかり解消しないと、関係者に余計なこの不安を与えてしまう」と語った。

 一方、従業員の給与を引き上げた企業への税制優遇や看護、介護、保育などの公的価格の引き上げ、中間層への教育、住宅費支援などを優先すべきだとする考え方も示した。

 所得税の負担率は、給与所得では所得が増えるほど税率が上がる累進制で最大45%だが、株の売却益や配当にかかる金融所得課税は一律20%。富裕層は金融所得が多いため、所得が1億円の人を境に所得税の負担率が下がっている。

 「成長と分配の好循環」を掲げる首相はこれまで、「分配戦略」の一つとして金融所得課税の見直しについて主張してきた。しかし、岸田内閣発足後の1週間で、日経平均株価が700円超下落。中国経済の先行き不安など海外要因が大きいが、海外メディアからは「岸田ショック」との評も出ていた。8日に就任後初めて行った所信表明演説にも盛り込まれていなかった。

 岸田氏は10日夕、自民党本部で記者団の取材に応じ、「もともとあった様々なメニューの中で優先順位について申し上げた」と説明。改めて公的価格の引き上げなどを優先的に行うとの考えを強調した。(森岡航平)