ノーベル経済学賞にカード、アングリスト、インベンスの米3氏

ロンドン=和気真也、古賀大己
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 スウェーデン王立科学アカデミーは11日、今年のノーベル経済学賞を米カリフォルニア大バークリー校のデビッド・カード教授、米マサチューセッツ工科大のジョシュア・アングリスト教授、米スタンフォード大のグイド・インベンス教授の3氏に贈ると発表した。

 カード氏は賃金と雇用の関係を実証的に解き明かすなどして労働経済学に貢献したこと、アングリスト氏とインベンス氏は因果関係の分析方法論を確立したことが評価された。

 3氏の研究は、社会の中で自然に起きる現象の原因と結果を観察する「自然実験」が、社会の諸問題への対応に役立つことを証明した。同アカデミーは会見で「経済学にとどまらず、社会科学全般に影響した」と授賞理由を説明した。

 カード氏は1990年代に、米ニュージャージー州と隣接するペンシルベニア州のファストフード店の賃金と雇用の関係を調査し、最低賃金が上がっていた前者と、変化がない後者で雇用の傾向に差がないことを突き止めた。「最低賃金が上がると雇用が減る」との認識を覆し、米バイデン政権が進める賃金政策の支えにもなった。

 カード氏は同様に社会で起きている現象から、移民の増減や教育制度の違いが労働市場に与える影響などを解き明かした。アングリスト氏とインベンス氏は、こうした自然実験の手法がどのような条件下で有効となるかを分析し、幅広い社会科学で応用できる理論に落とし込んだ。

 学習院大経済学部の宮川努教授は、今回の3人の受賞について「様々な属性の人が、どういう条件でどんな行動を取るのか、自然実験で明らかにする手法を労働経済の分野に応用したのが新しい。最低賃金や教育の有無などの影響も示した。深刻な格差を抱える米国の背景も、受賞につながった理由の一つかもしれない」と語った。(ロンドン=和気真也、古賀大己)