「育てるんや、私が」看護師が里親になると決めた日 増える家族写真
足立菜摘
「かーたん、かーたん」
くりっと丸い目を輝かせ、家の中を走り回っていた男の子(3)が、舌足らずに「母」を呼んでいる。
「どうしたの」。兵頭さおりさん(41)がほおを緩ませ、顔をのぞき込んだ。
男の子の鼻からは細い酸素チューブがのび、部屋の隅に置かれた機械につながっている。心臓と肝臓に生まれつき、障害がある。
この子が、愛媛県伊予市に住む一家のもとにやってきたのは1年前。初めは歩くことも話すこともできなかった。実の親に代わり、さおりさん夫妻が里親として男の子を育てている。
◇
昨年の5月半ば。訪問看護師として働いていたさおりさんの携帯電話に、登録していない番号から着信があった。相手は児童相談所の里親担当を名乗り、こう切り出した。「今度、手術をする子がおるんやけど」
美容師だった21歳の時、さおりさんは長男を産んだ。仕事が忙しく、20代後半には看護学校にも通い、あまり一緒に遊んであげられなかった。
看護師として10年働き、次男も3歳を過ぎたタイミングで、もっと子どもとの時間を過ごしたいと思うようになった。
「事情があって実の家族と暮…
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