死者7千人「濃尾地震」から130年 内陸直下型地震はまた起こるか

聞き手・床並浩一
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東海の防災を考える

 国内最大級の内陸直下型地震とされる「濃尾地震」は、28日で発生から130年になります。同じような地震が起こる可能性はあるのでしょうか。名古屋大学減災連携研究センターの平井敬(たかし)・助教に聞きました。

 ――濃尾地震は、地震の規模を示すマグニチュード(M)が8・0、岐阜、愛知両県を中心に7273人が犠牲になったとされています。なぜ起きたのでしょうか。

 「国内の主要活断層帯として知られる『濃尾断層帯』のうち、温見(ぬくみ)断層北西部と根尾谷断層帯、梅原断層帯の三つの断層が連動して活動したためです。最大震度は7と推定され、非常に広い範囲で震度6の揺れが起きました」

 「M7・3だった1995年の阪神・淡路大震災に比べ、放出されたエネルギーは10倍以上になります」

 ――内陸直下型地震の発生メカニズムを教えてください。

 「日本列島は、フィリピン海プレートと太平洋プレートが陸側のプレートの下に沈み込むことで、東西方向にギュウギュウと圧縮されています。南海トラフ地震のように、プレートの境界がすべれば『海溝型地震』となりますが、濃尾地震や阪神・淡路大震災のような内陸型地震は、内陸部の地殻内にできた割れ目(断層)が力に耐えられずにズルッとすべることで起こります」

 ――東海3県から関西地方にかけて、多くの活断層が分布していますね。

 「濃尾断層帯は『新潟―神戸ひずみ集中帯』と呼ばれる領域に含まれています。ここでは日本列島のほかの領域と比較して、東西方向に圧縮されるひずみの速度がものすごく速く、地震が多く発生しています。阪神・淡路大震災だけでなく、2004年の新潟県中越地震や18年の大阪北部地震の震源も、この集中帯に含まれています」

 ――濃尾断層帯を震源にした大きな地震が、再び起きる可能性はあるのですか。

 「たまっていたひずみが130年前に一度解消されたので、その断層では地震が起きにくくなるという考え方は確かにあります。国の地震調査研究推進本部が05年にまとめた長期評価によれば、根尾谷断層帯や梅原断層帯については、今後30年も今後300年も地震の発生確率は『ほぼ0%』とされています」

 「気をつけなければならないことは、三つの断層がズルッとすべったことで近くの別の断層がすべりやすくなる面もあるということです。逆に、すべりにくくなることもありますが、注意を怠るべきではないと思います」

 ――東海3県でM8クラスの内陸直下型地震が起きたら、どのような被害が予想されますか。

 「建物の耐震性や耐火性はずいぶんと向上しており、現行の新耐震基準で建てられた建物であれば、震度6強くらいの揺れでもすぐに倒壊する可能性は低い。その意味では、死者は少ないと期待しています」

 「しかし、当時と異なる種類の被害を心配しています。都市部で極端に過密化が進み、低地や急傾斜地など、かつては人が住まず、災害の危険度が高い場所までまちを広げたり、超高層の建物をつくったりしていますから、液状化や土砂災害、(ゆっくりとした揺れが繰り返される)長周期地震動による被害が懸念されます」

 ――「今後30年以内に80%の確率で発生する」といわれる南海トラフ巨大地震に比べ、内陸直下型地震に対する関心は低いように感じます。

 「歴史をひもとくと、南海トラフ沿いで起きた地震の前後で、内陸の活断層による直下型地震が増える傾向にあります。1944年と46年の昭和東南海地震と南海地震の前後、45年の三河地震や48年の福井地震など、M7前後の直下型地震が起きています。日本が経済成長を遂げ、阪神・淡路大震災まで大都市が壊滅するような地震がなかったことは、幸運だったと思うべきでしょう」

 「南海トラフが切迫しているということは、内陸でも大規模地震が起きやすいということがいえると思います。南海トラフ地震は時期はわかりませんが、起きることはわかっています。内陸直下型地震は一つひとつの活断層でみると活動周期が数千年以上であることが多く、確率評価ではどうしても低い数値になってしまいますが、日本列島には多数の活断層が点在しており、『我がこと』として地震がどこかで起きる可能性があると考えてほしいと思います」(聞き手・床並浩一)

 1986年、大阪府生まれ。名古屋大学大学院修了後、同大学院環境学研究科助教を経て、2020年10月から現職。専門は地震学・地震工学。気象予報士の資格も持つ。