「照れるね」ミスタータイガースも乗った縦じまタクシーなぜ生まれた
「まだまだ勝手に関西遺産」
白地に黒の縦じまをまとい、ボンネットではトラが牙をむく。名を「タイガースキャブ」と言う。経営者の熱き思いから初代が誕生して16年。2代目が生まれて13年。老いてもなお、2台の現役タクシーが甲子園かいわいを疾走している。
「夫が無類の阪神ファンだった。葬儀に来てくれないか」。そんな配車を依頼されたことがある。信号待ちで写真を撮ろうとするファンに囲まれてしまったこともある。
「よかれ悪かれ目立ってしまうので、運転にはより気をつけています」。キャブを運転して11年の乗務員(57)は言う。阪神電鉄の子会社「阪神タクシー」(兵庫県西宮市)が運行する205台のタクシーの中でも、キャブは「顔」だ。運転技術、接客に優れた乗務員が選ばれ、通常は赤と紺、青と紺のネクタイも、黄と黒と決まっている。
プロ野球・阪神タイガースが勢いに乗っていた時代に生まれた。
記事後半では元阪神タイガース選手、掛布雅之さんの思いを紹介します
「若いもん集めて、やりたいこと立案せいや」
2004年夏、阪神タクシーの新たなトップに竹田邦夫社長(当時)が就き、営業企画課を新設。課長の南勝也さん(57、現営業部長)らに命が下った。地元の人に喜んでもらえる企画が練られた。認可制で決まっている運賃は値引きできない。プレゼントを渡すという案も出たが、決め手を欠いた。
ミーティングにはたびたび竹田社長が姿を見せた。「インパクトないとあかんやろ。同じグループなんやから、タイガース活用せな」。竹田社長の前職はチーム編成の指揮を執る球団本部長。「球団には後輩もおる。一緒に話に行こか」
企画は急展開し、車体をタイ…
【視点】 テーマを筆者と決めたころは、阪神タイガースが16年ぶりのリーグ制覇に向けて快走していました。関西ならではのこのタクシーを深掘りすればきっとおもしろい話が出てくるはずと阪神タクシーさんに取材をお願いしました。 まさか「生みの親」がタイガ