ナンプラー+酒=しょうゆの香り? においのデジタル化に成功

小堀龍之
[PR]

 赤緑青の3原色を組み合わせて様々な色が表現できるように、3種類のにおいで様々な調味料のにおいを表すことに、物質・材料研究機構(NIMS)の研究チームが成功した。将来的に、様々なにおいをデジタル化し、分解したり合成したりして、エンターテインメントや医療などに応用できるかもしれない。

 視覚や味覚は3原色、5原味など、いくつかの基準の組み合わせで表現できるが、嗅覚(きゅうかく)の仕組みは複雑だ。ヒトには約400種のにおいセンサーのたんぱく質があるとされ、はっきりした「原臭」は発見されていない。

 NIMSのチームは、膨大な種類があるにおいからいきなり原臭を探し出すのは難しいと判断。まず一部を選んで分析し、そのなかから基準になるにおいを見つけようと考えた。

 実験する材料としては、液体調味料に注目した。混ぜたり、においを測ったりしやすいうえ、香水や花などよりも安い。ケチャップやしょうゆなどを100円ショップで買い集め、純水を含めた12種を選んだ。においは嗅覚センサーで電気信号に変換し、「機械学習」の技術で解析して特徴を調べた。

 その結果、特に「ほかから外れて」目立ったのは、①魚からつくったタイのしょうゆ「ナンプラー」と、②料理酒③純水の三つだった。チームはこの3種を基準となる「擬原臭」と呼ぶことにし、そのほかのにおいをこの3種の組み合わせで表せるか調べた。

 すると、ナンプラーと料理酒を半分ずつ混ぜると、しょうゆのにおいを表せることがわかった。このほか、焼き肉のタレは①41%②21%③38%、マヨネーズは①51%②18%③31%の組み合わせで表すことができた。擬原臭を原色に対応させてLEDで光らせることで、においを色で可視化することもできた。

 もちろん、センサーは人の鼻ではないため、においの再現性には限界がある。チームが、通りかかった別の研究者に、ナンプラーと料理酒を混ぜた「しょうゆのにおい」をかいでもらったところ「言われればしょうゆと感じるかもしれないが……」と微妙な反応だったという。

 ただ、今回の研究で、レモン汁や穀物酢、ケチャップなど酸味のある調味料は似たグループに分類することができ、においの特徴をうまくつかめている可能性があるとしている。

 NIMS主任研究員の田村亮さんは「デジタル化できれば、バーチャルリアリティーなどで、においを遠い場所に届けられるようになるかもしれない」と話した。データをさらに増やして分析することも検討するという。(小堀龍之)

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

今すぐ登録(1カ月間無料)ログインする

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません