おもちゃの病院、宣言明けて診察再開 「患者」抱えた子どもが列

津田六平
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 東京都品川区には、毎年500個前後の「患者」が「治療」を求めてやって来る「おもちゃの病院」がある。修理を担う「医師」は全員ボランティア。緊急事態宣言の影響で休診が続いていたが、10月から、3カ月ぶりに診察を再開した。

 9日、品川区役所に近い区消費者センター。会議室を利用した「病院」には開院前から行列ができていた。

 「先生、急に動かなくなったんです」。母親と一緒に来院した佐久間駿(はやと)さん(6)はプラレールの電車を二つ持ち込んだ。クリスマスにもらったお気に入りで、母親が直そうとしたがうまくいかず、病院再開を待ちわびていたという。

 診察を担当した萩原清邦さん(81)が中をのぞき込み、「これは電池ケースの接触不良だね」。5分ほどの作業で電車は再び動き出した。「お医者さんすごい!」と駿さんは喜んだ。

 この日、2時間の診療時間に運び込まれたおもちゃは29個。利用者は子どもだけではない。押し入れに眠っていた踊るサルの「ルーシー」と来院したのは区内の71歳の男性。40年ほど前、息子が遊んでいたおもちゃだが、孫に見せてあげたいと、持ってきたという。ルーシーを手に「テレビゲームばかりじゃつまらないでしょ」と笑った。

 おもちゃの病院は1984年、区のおもちゃの修理教室を受講していたメンバーが「技術を生かす場を」と提案したのがきっかけで始まった。会場は何度か変更したが、診察は無料で週1回のペースで開院を続けてきた。

 お医者さんは現在9人。技術者だった人が多く、みんな機械好きで手先が器用だ。萩原さんは、放送局勤務で技術畑が長かった。「自分の技術をいかせるのがうれしい」と、自分の道具箱を携えて診療に臨む。

 持ち込まれるおもちゃは、人形やオルゴールなど多岐にわたる。部品がなければ、メーカーに取り寄せたり手づくりでこしらえたり。7割ほどは預かって直す「入院」で、修理できないものも1割程度ある。

 最近は外国製の部品が多くなり、交換できないことも少なくない。萩原さんは「壊れたら捨てるという意識がメーカーにも使う側にも強くなっている」と残念がる。

 医師歴20年を超える武田邦夫さん(72)は「目の前で大切なおもちゃが直ったときの子どもたちの笑顔がやりがいです」。おもちゃを直すことだけが病院の目的ではない。ものを大切にする心も育む場にしようと、子どもたちには修理の仕方や道具の使い方を教えることもある。

 開院は毎週土曜午後1~3時。月1回程度「休診」がある。問い合わせは区消費者センター(03・6421・6136)へ。(津田六平)