あなたの家計にも関係あり、円安の急加速 広がるアメリカとの金利差

江口英佑
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 東京外国為替市場で急激に円安が進んでいる。12日には一時1ドル=113円49銭まで下がり、2年10カ月ぶりの安値となった。大きな原因は、米国でのインフレ懸念の高まりと原油価格の上昇だ。円安は、輸出産業にプラスに働く一方、ガソリン価格の上昇などで家計の負担を重くする。今後の景気も大きく左右することになりそうだ。

 円は今年初め、1ドル=103円台だった。最近の急速な円売りドル買いで約10円、円安方向に振れている。

 最も影響を与えているのが、「経済の体温計」とも呼ばれる米国の長期金利だ。金融機関が長くお金を貸し出す際に適用する金利で、景気が良くなれば、新たな投資のためにお金を借りる人が増え、上がりやすくなる。逆に、景気が悪くなれば金利は下がりやすい。

 米国では新型コロナウイルスの感染拡大が一定程度収まり、経済の回復が本格化している。そんな中、働き手が十分に確保できなかったり、東南アジアの工場がコロナで稼働を停止した影響や需要の急拡大などでモノが不足したりして、物価が急上昇している。

 投資家などの間では、こうした物価の上昇を抑えるために、米国の金融政策を決める米連邦準備制度理事会(FRB)が対策を講じるとみられている。FRBはいま、コロナで打撃を受けた経済を下支えするため、金利を下げた「ゼロ金利政策」を導入している。景気の過熱を抑えるために、FRBがこの政策を取りやめ、金利を上げる時期を早めるのではないかとみられている。

 こうした予測が広がり、米国の長期金利はFRBの決定に先んじて上昇。足元では1.6%台と4カ月ぶりの高水準になっている。

 一方、日本は米欧に比べ、景気の回復が遅れている。日本銀行が大規模な金融緩和を縮小していく議論もできておらず、長期金利は0%近辺で推移し、米国との金利差が広がっている。円でお金を持っているより、ドルで持っていた方が利息を得られるため、円売りドル買いが進んでいる。

 こうした状況に追い打ちをかけているのが、原油価格の上昇だ。米ニューヨーク市場では11日、一時約7年ぶりに1バレル=82ドルをつけた。産油国が大幅な増産を見送っていることや、米国の石油関連施設がハリケーンによる被害を受けて生産の大幅増が見込めないことなどが要因だ。

円安の加速、今後の展開は

 第一生命経済研究所の熊野英生氏は「インフレ圧力が強い中で、原油価格が上がるとインフレ懸念を刺激して長期金利が上がり、円安につながる」と話す。

 日本は原油を海外からの輸入に頼っている。原油価格の上昇は、企業や家計のコストを増やすことにつながる。購買力にも影響が及び、景気の下押し要因になる。実際、日本のレギュラーガソリンの店頭価格も4日時点で約3年ぶりに1リットルあたり160円台まで値上がりしている。また、原油の輸入額が増えることで日本の貿易収支が悪化する、という懸念の広がりも、投資家が円を売る動きを助長しているとみられる。

 円安は一般に自動車などの輸出産業にはプラスに働く。海外で売る日本の製品の値段が安くなったり、円建ての売上高が上がったりするためだ。

 しかし、熊野氏は「円ベースの輸入物価が上がるため、コストがかかるようになる。需要が拡大するか、価格転嫁できるかもわからない。企業業績にとって先行きに不透明感をつくる、悪い面が目立っている」と語る。円安が急速に進めば、輸入物価の高騰を招く「悪い円安」につながりかねない。

 今後の見通しについて、みずほ証券の上野泰也氏は「今は金利相場の色彩が強い。米国の利上げの前倒しを織り込んでおり、行き過ぎの感がある。どこかで反動があるとみている」として、円売りドル買いの進行余地は限られるとみている。(江口英佑)