神戸のおしゃれと自然、魅力聞かせて 街の強み生かすには

鈴木春香
[PR]

 【兵庫】山と海に囲まれた、おしゃれでハイカラな街――。街の魅力をアピールする時、神戸がまとうのは常にこんなイメージだった。だがそれらは実際の魅力として、十分に生かされてきただろうか。市長選を前に、神戸の「おしゃれ」と「自然」について、それぞれに携わる人の話を聴いた。(鈴木春香)

「神戸タータン」発起人 石田原弘さん

 東灘区で「石田洋服店」を営む。神戸の海と山、真珠、ポートタワーなどを5色のチェック柄で表現した「神戸タータン」を発案し、16年に、広めるための協議会を設立。加盟すればタータンのデザインを自由に使える仕組みを作った。65歳。

――神戸のおしゃれなイメージはどこからきているのでしょう。

 子どもの頃は大阪に住んでいたのですが、外国文化の影響を受けた服が並ぶ個性的なセレクトショップがたくさんあった神戸は「おしゃれ」の象徴でした。70~80年代には東京の女性ファッション誌がこぞって神戸のお嬢さんを取り上げていました。華やかなアパレル産業が注目された影響は大きかったと思います。

 ただそうした昔のなごりは希薄になりつつあります。完全に消えてしまう前に、なんとかしなくてはと危機感を持っています。

――神戸タータンを作ったのは方策の一つですか。

 おしゃれなイメージは開港以来、欧州の玄関口として培った文化を生かし、神戸の人たちが作りあげてきたものです。それを引き継ぎ、神戸の人が誇りを持てるようなものを作りたいと思いました。

 英国生まれのタータンは神戸にこそ似合います。スコットランドで氏族ごとに固有のタータンが使われたように、「神戸」という氏族を構成する神戸人に愛されてほしいと思います。行政とも協力し、ハンカチや自販機、学校の制服まで、タータンを使った商品はすでに350以上。浸透してきたと感じます。

――タータン以外にもできることはありますか。

 私は大学でファッションビジネスを教えていますが、アパレル業界に関心を持っても神戸で就職先がなく市外へ出て行ってしまう学生が多くいます。例えば市内に研究拠点をつくり、服のデザイン、プロデュース、販売まで一通りできる人材を育ててはどうでしょうか。民間がエンジンとなりつつ、官学とうまく連携して、みんなでおしゃれな雰囲気を守っていく必要があると思います。

茅葺き職人 相良育弥さん

 北区淡河町出身。茅葺き職人をめざし京都で修業した後、独立。屋根の修繕や茅葺きについて伝えるワークショップに取り組み、19年に会社「くさかんむり」を設立した。国内外で活動し、茅葺きの新たな活用の仕方にも挑戦している。41歳。

――神戸市には北区の農村地域を中心に茅葺(かやぶ)きが700棟もあるそうですね。

 茅葺きは他県にも残っていますが、だいたい県庁所在地から車で2~3時間くらいの場所。神戸は中心部から車で30分ほどで、これほど都市の近くにあるのは珍しいです。神戸に茅葺きというと意外かもしれませんが、「六甲山の裏も神戸市やねんで」と言いたいですね。実際、市内の農村地域はかなり広いです。

――その自然を生かして、市も「里山暮らし」をPRしています。関心を持つ人は増えていますか。

 20年ほど前の淡河町には僕以外に若者はいないんじゃないかという感じでしたけど、東日本大震災の後から移住の動きが出始めて、20~40代を中心に少しずつ増えてきました。自然の中で子育てをしたい、生活に自給自足をとり入れたいといった人たちがいます。仕事は都心部に通っている人もいるし、リモートワークをしている人も。僕自身も、街にすぐ出られるので田舎に住んでいるという感覚はあまりないですね。

 コロナ下では都市の密を避けて訪れる人がめちゃくちゃいました。交流人口も間違いなく増えています。

――順調ですか。

 PR自体は良いのですが、移住希望者の多さに対して住む場所の提供が追いついていません。農村地域は、農地を守るための規制で新しい建物を建てることが難しい。基本的に空き家を探すしかありませんが、圧倒的に足りていません。家が見つからず他の自治体に行ってしまった人を数多く知っています。何らかの策を取る必要があります。

 海外で見られるような、美術館などに茅葺きを使ったモダンな公共建築が今後神戸でもできたらいいなと思います。面白いものを作れば、人が集まるきっかけになるはずです。