韓国前検事総長「ナワバリ」発言 元法相が反発「オヤブンマインド」

ソウル=鈴木拓也
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 来年3月の韓国大統領選をめぐり、保守系最大野党「国民の力」の有力候補である尹錫悦(ユンソクヨル)前検事総長が発した日本語の一言に、宿敵の曺国(チョグク)元法相がかみついた。その言葉は「ナワバリ(縄張り)」。韓国でも一般的に通じる日本語で、ドラマや映画のセリフにも登場する。曺氏は何を問題視したのか。

 韓国メディアによると、尹氏は11日に、韓国南西部の光州を訪問。記者団との懇談で「40年前の尊い犠牲を通じて、繁栄しなければならない」と述べた。そのうえで、与党「共に民主党」の系譜である進歩(革新)系の政治勢力について、「数十年間、(光州を)ナワバリのようにしてきたが、やってあげたことは何もなかった」と述べた。

 尹氏が言及した「40年前の尊い犠牲」とは、1980年5月に民主化を求めて立ち上がった学生や市民を軍が武力弾圧した「光州事件」のことだ。弾圧を主導した全斗煥(チョンドゥファン)国軍保安司令官は事件後に大統領になり、軍事独裁政権を敷いた。

 光州事件は韓国で「5・18民主化運動」とも呼ばれ、87年の民主化につながった。文在寅(ムンジェイン)政権や、政権を支える共に民主党に所属する政治家らは、軍事独裁にあらがった民主化運動の流れを継承していると自負する。光州は進歩系支持層が厚い。

 この発言に文政権で法相を務めた曺氏がかみついた。尹氏が進歩系の「聖地」で放った発言に我慢がならなかったようだ。11日夜、フェイスブックに「『ナワバリ(縄張り)』という日本語を使った尹錫悦は、『オヤブン(親分)』マインドの持ち主だ」と投稿した。日本の暴力団が勢力範囲を縄張りと表現することから、尹氏を「オヤブン」と称したようだ。

 曺氏は法相時代に、文氏肝いりの検察改革を進めようとしたが、検事総長だった尹氏の抵抗を受けた。曺氏は辞任後、娘の奨学金受給や大学入学をめぐる不正事件で検察から起訴されている。因縁の間柄にある尹氏に向けた突然の「口撃」に、韓国メディアは素早く反応。「同じ日本語を使って皮肉った」(テレビ局MBN)などと伝えた。

 韓国には、「モチ(餅)」「ワク(枠)」「ブンパイ(分配)」「オシウリ(押し売り)」「クセ(癖)」など、日常で何げなく使われる日本語がある。他にも発音は異なるが、「マンニョネ(忘年会)」「タバンサ(茶飯事)」など、日本の漢字語由来の単語も少なくない。

 こうした単語は、日本統治時代に日本語を強要されたことによる「残滓(ざんし)」と批判し、韓国の固有語を意識して使うべきだとの主張も聞かれる。(ソウル=鈴木拓也)