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専門記者・木村裕明
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アナザーノート 木村裕明記者

 パラリンピック開幕目前の8月中旬。夏晴れの日に訪ねた東京・日本橋のカフェで過ごしたひとときは、一風変わったものだった。

 カウンター越しに出迎えてくれたのは、エプロンを身につけたヒト型ロボット。目の前で抽出器具のフレンチプレスを器用に操り、グアテマラ産の豆で本格的なコーヒーをいれてくれた。香り豊かなコーヒーも、添えられたチョコレートも、とてもおいしい。

 「今日は愛知県から操作しています。ひきたての豆をご準備しました」「ゆっくりとお湯を注いでいきます」

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 声の主は、ロボットを自宅から遠隔操作する藤田美佳子さん。バリスタとしてカフェで働いていた4年前、全身の筋肉が徐々に動かなくなる難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」の確定診断を受けた。今は日常生活に介助が必要だが、動く指先でマウスを操作してカフェのロボットを自在に操り、来店客との会話を楽しみながらコーヒーをいれている。

 ここは、遠隔操作ができるロボット「OriHime(オリヒメ)」を開発し、外出困難者の社会参加や就労を支えるオリィ研究所が6月から運営する「分身ロボットカフェ」。障害や難病などで外出が難しい人が、離れた場所からバリスタのような手作業や接客をできるようにする実験店だ。やはりカフェで働いた経験があり、心の病を患って外出が難しい村井左依子(さえこ)さんも、埼玉県の自宅からコーヒーをいれている。

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オリィ研究所が運営する「分身ロボットカフェDAWN ver.β」の店内。外出困難者がロボットを遠隔操作して接客している=東京都中央区

「合体ロボ」が夢を現実に

 「もう一度、お客さんに自分でコーヒーを入れたい」。2人の願いをかなえたいと、オリィ研究所の吉藤健太朗代表が川田テクノロジーズに協力を呼びかけた。同社のグループ会社が開発した、手先が器用なヒト型ロボット「NEXTAGE(ネクステージ)」と、コミュニケーションが得意なOriHimeを「合体ロボ」にすることで、2人の夢が形になった。

 分身ロボットの技術が進化すれば、「いずれは、動かなくなった体の介護を自分でできるようになるかもしれませんよ」。

 吉藤さんは8年ほど前、ALS患者の支援を続ける日本ALS協会の関係者にそう伝えたことがある。「当時は全く信じてもらえませんでしたけど、分身ロボットでできることが少しずつ増えてくると、未来のイメージが持てるようになるんですね。コーヒーをいれるだけでなく、『こんなこともできるかもしれない』と想像の幅が広がっていく。そのこと自体に価値があります」

 ふだんは工場の製造ラインで人と並んで部品を組み立てている産業用ロボットの「NEXTAGE」が遠隔操作の手作業にも活用できると分かり、人手不足の建設現場に遠隔でノウハウを提供するといった新たな可能性も見えてきた。畑違いのバリスタ実験に参加したことで、川田テクノロジーズのビジネスチャンスも広がった。

 テクノロジーで「できない」を「できる」に変え、生き方や働き方を変えていく。その可能性を「見える化」したカフェを、軽い足取りで後にした。

 次の日、東京・大手町で開か…

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