文部科学省の問題行動・不登校調査で、昨年度、小中学校で不登校だった児童生徒と、小中高校から報告があった自殺者の数が、いずれも過去最多となった。子どもたちはどんなことに苦しみ、周囲は何ができるのか。
長野市に住む中学2年生と小学5年生の兄弟は、新型コロナによる昨春の一斉休校の後から、不登校が続いている。
2人とも、もともと学校がつらく、登校しようとしては腹痛などに見舞われた。それでも、将来を心配する父親(53)の強い勧めで登校。母親(48)が教室に付き添うこともあった。
一斉休校になり、それまでの2人の様子を見かねていた母親は、あえてゲームも動画視聴も制限しなかった。休校明けから通うフリースクール「信州親子塾」で弟は、理事の斎藤光代さんに、休校後に学校が始まった際のことについて「まじでやばいと思ってた。死にたい気持ちになるくらいだった」と打ち明けた。いま、兄弟は症状が治まり、食欲も戻った。
母親は「学校は行かせなければならないものと思っていた。いま思うと、我慢させすぎていた」と振り返る。教員歴が長い斎藤さんは「周りに合わせようと無理を重ね、休校をきっかけに一気に噴出したのだろう。『右向け右』の一斉指導が合わない子には、自分のペースで活動できる環境が必要だ」と話す。
黙って食べる給食「嫌だった」
川崎市の「フリースペースえん」に通う小6の女子児童は、今年4月から登校していない。友達との関係が苦しくなったという。「学校では自分の性格を出せないし、言いたいことも我慢して、もやもやした。給食も黙って食べるのが決まりで、嫌だった」という。
「えん」を運営する認定NPO法人「フリースペースたまりば」理事長の西野博之さんは「給食は黙って食べ、行事は中止や延期では、楽しくなくなるのは当然。くっついたり群れたりする機会も奪われたストレスが、学校へ行きたくない気持ちにつながっている面はある」と話す。
もう一つ、西野さんが指摘するのは家庭内不和だ。
「家で仕事をする夫がいつも…
- 【視点】
子供の自殺というと、学校のいじめが主に連想されます。一方で、学校の活動やその人間関係こそが居場所となり、それが自殺の抑止力になることもあります。それは家庭も同じです。家庭こそが居場所にもなれば、家庭こそが子供の人生を苦しくさせる場所にもなり