北米大陸の「ノースウッズ」と呼ばれる湖水地方の野生動物などを20年以上にわたり取材する写真家の大竹英洋さん(46)。昨年初の本格写真集「ノースウッズ―生命を与える大地―」を発表。同作品で第40回土門拳賞を受賞した。この地をライフワークの拠点にしたきっかけは「オオカミの夢」だという。
――土門拳賞おめでとうございます。
「ありがとうございます。正直言ってびっくりしました。20年をかけて取材してきましたが、僕の心の中では初の写真集ということもあって新人の気持ちでいました。地道な活動を評価してくれてすごくうれしかったです」
――北米のノースウッズを撮影のフィールドに選んだ理由を教えて下さい。
「ノースウッズとはアメリカとカナダの国境付近を中心に北緯45度から60度にかけて広がる森と湖の世界の呼称です。僕がそこを選んだというよりも気付いたらそこにたどり着いていたという感じです。大学時代に所属したワンダーフォーゲル部を通して自然に親しむうちに写真家を目指したいと思うようになりました。どこをフィールドにしようかと迷っていた時に見たのが『オオカミの夢』でした。東京の自室で就寝中、雪の降る森の中にオオカミが現れたんです。気になるので地元の図書館に行って調べた時に出会ったのが世界的に有名なジム・ブランデンバーグ氏の写真集『ブラザー・ウルフ』でした。『この人に弟子入りしたい。そして自分の目で生きている野生のオオカミの姿を見てみたい』。1999年5月末に同氏とオオカミが暮らすミネソタ州北部を訪ねたのが始まりです」
――その後、ジム・ブランデンバーグさんとは。
「当時弟子入りはかなわなかったのですが、すぐに自分の撮影を始めた方がいいと、ジムが所有する敷地内の小屋を貸してくれました。写真に関してはテクニカルなことよりも撮る側としての姿勢を学びました。私の写真集の序文も書いてくれました」
――ノースウッズで撮影を始めた頃に苦労したことは。
記事後半では、日本では絶滅したオオカミの撮影の苦労話やノースウッズの魅力について語ります。大竹さんのトーク講座のお知らせもあります。
「オオカミをテーマに選んだ…