第1回日朝交渉、消えたキーマン 粛清か?拉致被害者帰国の「パイプ役」
ソウル=鈴木拓也
■日朝秘密交渉を追う(上)
2016年夏。中国・北京にあるホテルの一室で、政界関係者として北朝鮮に人脈を持つ日本人男性は、「キム」と名乗る50歳代の男と向き合っていた。日本人男性によれば、キム氏は自らが北朝鮮の秘密警察・国家保衛省で対日関係を担当していると明かしていた。拉致被害者の横田めぐみさんの娘、ウンギョンさんの生活支援もしていると語ったという。
キム氏と日本人男性はその前にも何度か会ったことがあった。男性によると、この時の面会で、キム氏は「人目が気になる」といい、夕食に出かけることは拒んだ。2人はスーパーで買った菓子をつまみに、安物の赤ワインを飲みながら語り合ったという。このころ、北朝鮮は核実験やミサイル発射を繰り返していた。
日本人男性は、ほろ酔いになったキム氏が、たばこをくゆらせながら話した愚痴を覚えている。「我々は失敗したら命が危ないこともある。だけど、日本人は部署が変わるだけで済むんだ」
「失敗したら命が危ない」
日本語は流暢で、沈着冷静で語り口は論理的…。消えた「キム氏」とはどんな人物なのでしょうか。
この日、キム氏はこうも話し…
【10/25まで】すべての有料記事が読み放題!秋トクキャンペーン実施中!詳しくはこちら