「愛していると言ってくれ」、幻の「続編」があった 北川悦吏子さん

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聞き手・上田真由美
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 コロナ禍の「ステイホーム」が始まった昨春、四半世紀前のドラマ「愛していると言ってくれ」(TBS、1995年)が再放送され、話題を集めた。豊川悦司演じる耳の聞こえない画家と常盤貴子演じる劇団員のラブストーリーで、手話ブームも起こした。実はこの大ヒット作、もとは常盤さんが聞こえない役の構想で、さらに幻の「続編」があったのだという。脚本家北川悦吏子(えりこ)さんが、いまだから明かせる裏話を教えてくれた。

 ――そもそもなぜ、手話をコミュニケーション手段としたドラマをつくったのですか。

 不謹慎に聞こえるかもしれませんが、手話の手の動き、指で表現することがきれいだな、とずっと思っていました。それで手話を使う女の子を書いてみたくて。自分がずっと病気がちだったこともあり、ハンディキャップがある人がどう生きていくかという話を書きたいという気持ちもありました。

 ようやくチャンスがめぐってきて、書けたのが95年のあのタイミングだった、ということです。「素顔のままで」(フジテレビ、92年)、「あすなろ白書」(同、93年)などで、そのとき私は視聴率30%超えで当たり前、と思われているような時期だったけれど、プロデューサーの貴島誠一郎さんが「数字はとらなくていいです」と言ってくれた。

 ドラマは主婦の方が家事をしながらも見られるようにとか、「テレビは耳で聞く」と言われていたようなところがあって、手話で会話するために音がなく、延々と字幕をつけるというのは大きな勝負でした。でも、それをやってくれる制作チームだったんです。

豊川さん、撮影時は耳栓をして

 ――使う「言語」が違う2人は、住む世界が違うのかと葛藤します。あのヒリヒリするようなすれ違いは、一方に聴覚障害があるからこそだったのでしょうか。

 常盤さん演じる「水野紘子」は彼と話したくて、一生懸命手話を覚えます。2人はわかり合えなさに悩むけれど、それは障害のせいではなく、人と人が対峙(たいじ)する恋愛だから。相手は自分ではなく他人なので、わかり合えないとか、そういうときに不安になったりという気持ちの基本は、変わらないんじゃないかな。

 聞こえない人を書いたという…

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