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コロナ付いたら光るマスク ダチョウ研究者の学長、自らの体で実証

竹野内崇宏
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 ライトを当てると、新型コロナウイルスがついているか分かるというマスクを、京都府立大学が開発した。マスクの表面で、ダチョウ由来のたんぱく質が光る仕組みだ。その輝きを確かめたのは、自らも新型コロナ感染者となった塚本康浩学長(52)だった。

 10月初旬、京都府内のキャンパスであった会見で配られた資料には、よく見る不織布製のものと変わらないマスクを着けた女性の写真が掲載されていた。塚本さんは「世界中で使ってもらえる製品にしたい」などと成果を誇ったが、見た目だけではピンとこない。

 秘密は、マスクの中にある。ウイルスに反応するたんぱく質の一種「抗体」が組み込まれたフィルターが入っている。獣医師で動物衛生学が専門の塚本さんは、抗体を生産する能力が高いダチョウに、狙った抗体を大量に作らせる手法をコロナ禍以前から研究。新型コロナに反応する抗体の作製も昨年2月に成功した。

 この抗体の活用先として、ウイルスがつく機会が多いマスクに着目。今回のフィルターを開発し、紫外線など特定の光にも反応する蛍光性の別の抗体を含むスプレー剤もつくった。

 考えはこうだ。マスク着用者のつばなどにウイルスが含まれていればフィルター内の抗体がウイルスをキャッチ。そこへ蛍光性の抗体をスプレーすれば、最初の抗体が捕まえたウイルスにさらに付着する。最後に市販のブラックライトや携帯電話の照明を当てれば、蛍光を放つ。

 あとは実際の感染者で光るかを確認するだけ――。

 実験を計画していた今夏、塚本さん自身が試用していたマスクが、紫外線ライトに反応して光った。

 「感染しているのかも」。すぐに自主隔離生活に移り、PCR検査を受けたところ実際に陽性反応が出た。デルタ株だった。

 症状は幸い、発熱やだるさだけで済んだ。自身が発症中に使っていたマスクは光り、回復後7日目のものは光らなかった。

 他にも、医療機関から研究用に提供を受けた感染者ら十数人分のマスクが発光することを確認。一方、健康な8人が8時間着けたマスクは発光しなかったと説明する。自分の体でも検証した結果に自信を得た。今後、正式な感染検査のキットとしての承認や、医療機関でのスクリーニングなどに使ってもらうことを視野に、販売もめざす。

 塚本さんは「使い捨てのマスクでウイルスの存在を可視化できれば、早期に感染拡大を防ぎ、安心感にもつなげられる。自分が感染したからこそ実証できたという、専門家としては皮肉ながらうれしい結果だった」と話す。(竹野内崇宏)