「失敗したぐらいで会社辞めるな」凄腕の樹木医、若き日の苦い記憶

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石山英明
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凄腕しごとにん

柳島寿々喜園 常務取締役 坂元博明さん(65)

さかもと・ひろあき 1956年、鹿児島県生まれ。東京農業大学農学部造園学科を卒業後、79年に柳島寿々喜園入社。ゼミの先生の紹介だった。実家はお茶の生産農家。趣味は約30坪の家庭菜園

 10月上旬、よく晴れた東京・谷中霊園。樹齢100年前後とみられるタブノキの下から見上げると、まばらな枝と葉の間に雲一つない青空が広がっている。

 幹まわりは約3.1メートル。素人目には堂々と構えた大木だが、坂元さんの見方は違う。「下から青空が見えるのは、木の調子が悪い証拠です。枝も葉も少ない」

 樹木の周りを歩き、問題点を見つけていく。「木の周りの地面が少し低い。葉が少なくて日があたるはずなのにコケが生えている。雨水が流れ込むのかな。幹の低い位置の方が葉が茂っている。この木はコンパクトになりたがっている」。木づちを取り出して根や幹をたたき、鋼の棒を根に刺した。音で、感触で、内部がくさっていないか探る。根の横の土をかき分け、樹木に悪さをするキノコがないかも丹念に探した。

 年750本以上、こうした樹木の健康診断をするほか、移植、剪定(せんてい)、公園工事など、造園に関わるあらゆることを手がける。樹木医の資格をとって19年。「経験を通じて身につけた職人芸的な判断力に、科学的知見を加えて診断できる貴重な存在」。日本樹木医会の小林明理事(70)の評だ。他の樹木医たちから診断のコツの伝授を請われるなど、一目置かれている。

 葉のない季節は判断材料が減る。同じ樹木の同じ場所でも季節で水分量が変わる。木づちでたたいた音も違う。調子がいいか悪いか。原因は。樹木からのメッセージを逃さぬよう、耳と目に神経を集中させる。

 「人間といっしょで、元気であるかのように装う樹木もある。知恵比べです。不調の原因を特定できたときは、宝くじにあたったような感覚になります」

 小さいころから外遊びが好き…

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