キノコ採り遭難、通報の早さが生死左右 日没近いと捜索打ち切りも

宮脇稜平
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 秋になると、岩手県内ではキノコ採りによる遭難が相次ぐ。遭難した人が死亡した近年の事例を調べると、警察や消防に遭難発生が知らされるのが夕方以降や翌日などと遅く、大規模な捜索がすぐに始められないケースが多いことがわかった。

 県内で発生したキノコ採りが原因の遭難は2016~20年の5年間で計51件。死者は計9人だった。今年は9月末時点で3件の遭難があり、すでに2人が亡くなっている。

 計11件の死亡事故について、遭難を警察が把握したタイミングを調べると、キノコ採りに出かけた当日の午後5時以降が7件、翌日以降が1件。約7割が当日の夕方以降だった。帰りが遅いことを不審に思った家族らが通報する例が多い。

 県警地域課によると、今年9月に大槌町の山林でキノコ採りに出かけた70代の女性が死亡した遭難事故では、家族が夕方に消防団に相談。午後7時半ごろに県警が認知し、本格的な捜索が始まったのは翌日の午前6時だったという。

 一方で、県警が日中に遭難を把握した場合は、病気や突発的な事故を除き、ほとんどが死亡につながらずに救助されている。

 なぜ、差が出るのか。地域課の岩持寿和次長は、日没が近い時間に遭難がわかった場合、当日は周辺の捜索のみで打ち切らざるをえない事情を理由にあげる。

 周囲が暗くなると、捜索にあたる警察官や消防隊員自身の遭難やけがにつながる恐れがあるからだ。本格的な捜索は翌日になり、遭難者は山中で夜を過ごすことになる。

 秋は日没の時間が早く、日が暮れると気温が大きく下がる。だが、キノコ採りの目的地は近場が多いため、軽装で携帯電話を持ち歩かない人も多いという。遭難中に低体温症で亡くなる例が多く、暗いなか歩き回ると滑落する恐れもある。クマに遭遇する危険性もある。

 死亡事故を防ぐためには、早めに遭難を知らせることが欠かせない。日中に遭難がわかれば、本格的に山へ入ったり、ヘリコプターを使ったりして探すことができる。地域課によると、誰かに連絡できるよう携帯電話を持ち歩くことや、複数人で行き、集合時間を決めて異変にすぐ気づけるようにすることが重要だという。

 県警は、騒ぎになることを懸念して通報が遅くなるケースもあるとみる。岩持次長は「家族や近所の人の帰りが遅くてもしばらく待ってしまい、通報が遅れたとみられる例もある。おかしいと気づいたら、通報をためらわないでほしい」と語る。(宮脇稜平)

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