ノーベル賞真鍋さんの功績、いまの気象予報にも 温暖化予測の「礎」
今年のノーベル物理学賞の受賞が決まった米プリンストン大上級研究員の真鍋淑郎さん(90)は、大気中の二酸化炭素(CO2)が増えると地表の温度が上がることを数値で示し、地球温暖化予測の先駆けとなった。その技術は、いまの日本の気象業務にどう生かされているのか。研究の現場で聞いた。
予報の現場でも
気温や湿度などの大気の条件だけでなく、海水温や海流といった海洋の影響も含めて計算する――。これが真鍋さんが1960年代に考案した「大気・海洋結合モデル」の考え方だ。いまの気象庁の3カ月先の予報や寒・暖候期予報、赤道付近の海面水温が平年より高くなり、世界的に異常気象を引き起こすとされる「エルニーニョ現象」の予測など様々な場面で活用されている。
だがその一番の役割は、大規模な気候変動の予測にある。「真鍋さんがつくったモデルは、現在の温暖化予測の全ての礎です」。気象庁気象研究所で気候変動の予測に携わる全球大気海洋研究部の山中吾郎部長(56)はそう語る。
地球温暖化が国際的な注目を集めたのは88年。米航空宇宙局(NASA)の研究者が「温暖化はCO2)などの温室効果ガスが大気中に蓄積されたことで引き起こされたものであることは99%確実」と、米連邦議会上院の公聴会で証言したことがきっかけだった。
最新の温暖化の科学を評価する「国連気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)も、同年に設立された。真鍋さんの研究は、IPCCが90年にまとめた第1次報告書の温暖化予測に使われた。
気象研究所では気候研究部(…