第12回「政治とカネ」広島3区 追い風の与党に焦る野党 そこに現れたのは

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大久保貴裕
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 「政治とカネ」で逆境の与党、攻め込む野党――。こんな構図だった選挙区で異変が起きている。舞台は、2019年参院選をめぐる買収事件で揺れた衆院広島3区。広島から30年ぶりとなる首相誕生に続き、公明党から同区に初挑戦する立候補予定者も入閣したことが与党への追い風となっているからだ。公示直前になって「第3極」も参入し、情勢は混迷を深めている。

一変したムード 「訪問先でお茶と菓子まで」

 「広島3区では、私が岸田政権の代表だ」

 斉藤鉄夫国土交通相(公明党)は街頭演説で繰り返し、こう強調する。今月4日に発足した岸田政権で入閣すると、そのわずか4日後には幹線道路沿いに岸田文雄氏と斉藤氏が並ぶポスターが一斉に張り出された。それだけ「この追い風は逃してはいけない。千載一遇のチャンスだ」(陣営幹部)という思いは強い。

 高まる期待の根底にあるのはこれまでの苦渋の日々だ。広島3区は、買収事件で一審有罪となり控訴した河井克行元法相の地元。妻案里氏の失職に伴う4月の参院再選挙では、政治不信を抱く自民支持層が離れて与党候補が敗北した。公明党は、当選無効となった国会議員の歳費を返還させる法改正へ動くなど信頼回復に奔走したが、案里氏を全面支援した菅義偉氏が首相の座にあり、有権者から「信用できない」と冷ややかな声を浴びせられた。

 それが地元から首相と国交相がダブルで生まれると一変。企業回りを続けてきた公明関係者は祝意ムードに驚いた。「面会拒否だった訪問先でお茶と菓子まで出してくれた。信じられない」

 平和や非核化を掲げる公明党の支持母体・創価学会にとって広島は特別な土地だ。しかし、これまで小選挙区で候補を擁立した経験はなく、党幹事長など要職を歴任した斉藤氏でも層の厚い自民支持者の票を引き寄せなければ勝機はない。一方、地元の自民側には、公募で内定した自民候補がいるなかで公明が斉藤氏の擁立を強行した経緯から、「公明党に選挙区を乗っ取られた」(関係者)との抵抗感も根強くあった。

 10日、斉藤氏の事務所開きに集まった100人の多くは自民関係者や広島財界幹部だった。首相の妻裕子さんが来賓として登壇し、夫に代わって「友党の自民党が一丸となって戦い抜きたい」と力を込めた。ある自民県連関係者は「斉藤氏の入閣で自民側の尻にも火が付いた」とした上で、こう解説する。「呉越同舟になってしまった。首相の地元で現職閣僚が議席を落としたら岸田政権のダメージになってしまう」

立憲の蓮舫氏、解散当日にさっそく応援

 一方で、焦りがにじみはじめた野党側。首相と国交相が地元選出であることを逆手に取った戦術で巻き返しを図ろうとしている。

 「大臣ポジションさえも選挙に利用する国になったのか。おかしい」。解散日の14日、立憲民主党の新顔、ライアン真由美氏は街頭演説でこう批判した。続いてマイクを握ったのは、舌鋒(ぜっぽう)の鋭さに定評のある蓮舫代表代行。12分間の街頭演説の出だしは、やはり「政治とカネ」だった。

大きく変わった構図。さらに公示直前になって、状況が急変する出来事が。記事の後半で紹介しています。

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