しぼむ水産業 問われる基幹産業の再興 青森県八戸市長選

横山蔵利
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 24日告示の青森県八戸市長選では、水産業の苦境が続くなかで、地域経済をどう持ちこたえさせるかが大きな論点となる。

 浜が栄えれば、陸が栄える――。かつて水揚げ量日本一を誇った八戸市では、こんな言葉が言い伝えられている。地域経済を支える基幹である水産業の衰退は止まらず、立て直す道しるべも見えていない。

 小林眞市長は国や県、水産業界と協調して、サバを引き受ける施設「第3魚市場荷さばき所A棟」を総額22億円かけて八戸港に整備した。高い衛生管理基準EU・HACCP(ハサップ)の登録を受け、八戸産のサバをブランド化して輸出を後押しする。水産業再興の足がかりを築く、夢の膨らむ施設のはずだった。

 期待は裏切られた。2013年に本格的に稼働したが水揚げが構想時から大きく減っており、すべてをA棟で扱っても目標取扱量に遠く及ばない。しかも、使いにくい、国内の流通には必要ないといった理由から別の施設を使う業者が多く、使用率は目標の10%以下にとどまる。

 A棟は、建設にあたって国から約5億5千万円の交付金を受け取っており、最悪の場合、返還を求められる可能性もあった。市は今年、改善計画を策定して乗り越えたが、施設の存在が重荷となっているのが実情。不漁が続くなかで、「夢の施設」にすがった判断への批判もある。

 漁業者のひとりは「とにかく魚が取れない。魚さえ来れば、さまざまな問題も解決できるのだが。それまで、行政も漁師ももつかどうか」と語る。「取る漁業」一辺倒からの脱却、後継者の育成といった、水産業そのものの根幹を守る対策が求められている。

 水産業をはじめとした経済が衰えていくことで、八戸市全体の活力をそぐことに直結している。

 地方の人口減少は全国的な傾向だが、なかでも秋田県青森県は著しいとされる。国勢調査によると、青森県全体の人口は1985年調査の152万4448人をピークに減り続け、2020年調査の速報値では123万8730人まで落ち込んでいる。

 こうしたなかで、八戸市は県内では人口の減少が緩やかだとされてきた。住民基本台帳に基づく人口は南郷村と合併した05年の約24万9千人がピークで、その後は漸減傾向でとどまってきた。ピークだった05年に市長になった小林氏は、企業誘致などに力を入れてきており、そうした対策がそれなりに功を奏していたとみられている。

 しかし、ここにきて八戸市でも人口減が徐々に加速している。子どもや15歳から64歳までの生産年齢人口の割合が低下し、65歳以上の老年人口は3割を超えた。経済規模の縮小に伴い、少子高齢化がいっそう進むという構図だ。

 活力ある水産都市の復活をめざすのか、少子高齢化に対応した地域社会を作るのか、岐路に立つなかでのリーダー選びとなる。(横山蔵利)

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 市水産事務所のデータでは、八戸港の水揚げ高は1966年~1968年、78年、99年、2000年で全国主要港でトップだった。1978年は75万1978トンにのぼった。近年では2017年は9万9972トンで7位、18年は10万8192トンで6位、19年は6万6117トンで10位。19年のトップはここ数年不動の銚子港。釧路港、焼津港、長崎港、石巻港と続いている。