福島の激戦区で野党共闘、自民に焦り 「死ぬ思いで支援獲得に動く」

2021衆院選

上田真仁
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 首相・岸田文雄への各党の代表質問が衆院本会議で始まった11日の夜。とんぼ返りで地元に戻った自民党前職の菅家一郎の姿が、会津若松市内であった同党の参院議員森雅子(福島選挙区)の後援会の会合にあった。

 「皆さんの力がぜひとも必要。どうかお力を頂けますよう、よろしくお願い申し上げます」

 参加した市長の室井照平や地元県議ら約15人に頭を下げる菅家。森後援会の男性は「森後援会としても、ぜひとも菅家一郎に勝ってもらわなければならない。死ぬ思いで支持獲得に動いて頂きたい」と呼びかけた。

 危機感の要因は野党共闘だ。野党は県内全5選挙区で初めて候補者を一本化。中でも4区は2017年衆院選で、当選した菅家と立憲民主党前職の小熊慎司(当時は希望の党)との票差がわずか1209票。今回は立候補を見送り、小熊の支援に回る共産党社民党の両候補の票を合算すると逆転する計算で、「(小熊氏と)1万5千票差がある」(自民党関係者)との声も出る。

 さらに逆風となるのがコロナ禍で飲食店などの需要が減り、下落した米価の問題だ。JA全農福島が示した米の概算金(1等、60キロ)は昨年比で2~3割安く、会津産コシヒカリ以外は1万円を割った。特に原発事故後の風評で業務用への切り替えが進んだ県産米は影響が大きく、「どうやって生活するのか」との農家のうめきも聞こえる。

 立憲は民主党政権時代に導入し、自公政権が廃止した農業者戸別所得補償制度の復活を掲げ、農家にアピール。共産も過剰在庫米の政府買い上げなどで攻勢を強める。一方の自民は岸田が11日、在庫米の保管経費を政府が補助する考えを表明したが、JAが要望する「過剰在庫米の市場隔離」からするとパンチ不足は否めない。

 JA会津よつば組合長の長谷川正市は、菅家が8月1日に開いた事務所開きに自民の友好支援団体代表として出席。取材に対してこう語気を強めた。「政権与党の中で(過剰在庫米の市場隔離などを)しっかりとお願いしたい」

 「数年前は一緒に衆院選を戦った同士。それが今では同じ釜の飯を食う形になっている」。9月18日、会津若松市であった小熊陣営の連合後援会役員会。小熊は17年に4区で候補を立てた社民関係者に向かって壇上から頭を下げた。

 小熊は元自民県議。10年参院選みんなの党から初当選し、その後は日本維新の会、民進党、希望の党、国民民主党などを渡り歩き立憲入りした。旧民主系や共産とは距離を置く「第三極」に身を置いた期間が長く、共産との共闘に慎重な姿勢を示したこともあった。12年、14年、17年衆院選で共産、社民が4区で候補を立てた要因でもある。

 小熊はこの4年、地ならしを続けた。19年の衆院大阪12区補選では共産候補の応援に入り、現地で街頭演説。東京電力福島第一原発の処理水問題では「理解を得られていない、反対だ」と賛否を明確にした。こうした姿勢に、距離のあった共産も「自公政治を変える戦略の中で、小熊さんを全力で支持する」(地区委員長の唐橋則男)と評価。

 12年の引退以来、小熊を支えてきた元衆院議員で、「黄門様」こと渡部恒三が昨年死去。渡部の後援会は最盛期に4万票の影響力があったともされ、保守層の取り込みにも心を砕く。

 この戦いで、小熊が身につけているのは渡部の遺品のネクタイだ。西郷村にある渡部ゆかりの施設に残っていた3点を譲り受けた。陣営の広報部長の真部正美は「小熊の敵は菅家ではない。後援会が緩まないこと」と断言する。

 衆院解散前の13日、小熊は保守系の村議を同乗させ、西郷村を回った。コロナ対策として「車に乗ったままで訴えを聞いてもらう新しいスタイルを試みる」ともいう。=敬称略(上田真仁)

【福島4区】

立候補予定者

菅家一郎(66)自民・前③ 元会津若松市

小熊慎司(53)立憲・前③ 元参院議員

2017年衆院選の結果

○菅家一郎(自民)68282

△小熊慎司(希望)67073

 古川芳憲(共産) 9492

 渡辺敏雄(社民) 8063

*丸数字は当選回数、○は当選、△は比例復活

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