都立病院や公社病院の独法化議案が可決 都民に不安の声も

関口佳代子
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 東京都立病院と公社病院を独立行政法人に移行するための議案が今月、都議会で可決された。独法化は、「病院の収支を改善することで持続的に医療が提供できる」として都側が打ち出し、都議会で論戦が続いてきた経緯がある。都は2022年7月の移行を目指すが、都民の間には「新型コロナウイルス対応など、採算の取れない医療が切り捨てられるのでは」と、不安の声も広がっている。

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 独法化の対象となっているのは、八つの都立病院と六つの公社病院とがん検診センター。独法化されると都が設立する「東京都立病院機構」が運営主体となる。

 一般的に、都立・公社病院に求められる役割は、民間病院で不採算となりがちな「行政的医療」を担うこととされる。救急、災害、感染症や精神科周産期医療などが挙げられる。

 20年春から続くコロナ禍では、都内のコロナ患者入院用の病床6651床のうち、都立・公社病院で約2千床を確保。8月下旬に重症者がピークを迎えた際には、3割近くの患者を受け入れ、公的な医療機関としての役割が改めて注目された。

 ただ、行政的医療を担うが故に、採算面では苦しい状況が続いてきた。都立・公社病院全体でみると、会計は16年度から赤字が続き、20年度は一般会計から361億円を繰り入れた。赤字経営が常態化する中、識者や公認会計士などで作る「都立病院経営委員会」は18年、持続的に医療を提供していくため、「経営基盤の強化が必要」とする報告書を提出。「運営上の判断を実行に移すまでには、地方自治体としての手続きが求められるため、医療ニーズに即応することができない」などして、独法化の検討を都に促した。

 これらの提案を踏まえ、小池百合子知事は19年12月、独法化の方針を表明。今年9月の都議会定例会では、時期として22年7月に都立病院機構を設立する計画を明らかにした。機構を設立するには今後、総務省の認可を得るほか、病院の方針を定める中期目標を都議会に諮ったり、都立病院を廃止する条例を都議会で可決させたりする必要があるという。

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 実現に向けて動き出した独法化だが、懸案は残る。

 独法化の利点として、都が主張するのが「医薬品などを一括購入できるスケールメリット」、病院運営の実情にあった給与制度などだ。ただ、どの程度の経費が削減できるかの試算はしているとするが、その額を公表する予定はないという。都は「独法化によって行政的医療が削られるわけではない」と説明。機構の運営資金は都が100%出資し、独法化後も一般会計からの繰り入れも継続する方針を表明している。

 都の方針に、都議会では疑問や批判の声があがる。定例会最終日の今月13日の本会議では、「経営効率が求められ、不採算でも都民のための必要な行政的医療が後退する」(共産党)、「独法化を契機に貴重な医療従事者が流出してしまう可能性を否定できない」(立憲民主党)と反対の声も出たが、厚生委員会の報告の通り、可決された。

 医療従事者からは不安の声が上がっている。都内の医療従事者などが呼びかけ人となった「都立病院をつぶすな!署名アクション」有志のメンバー約20人は10月13日、本会議に合わせて都庁前で抗議活動をした。「都立病院を守れ」「公的医療を守れ」などと訴えた。都内の特別養護老人ホームで看護師として働く新井佳世子さん(47)は、新型コロナの対応で都立病院が多くの患者を受け入れてきたとし、「感染症は人手が必要。採算を考えずに必要な人に医療を提供できるのが都立病院の魅力。(独法化で)金にならない人が切り捨てられるのではないか」と話した。(関口佳代子)