ポストコロナ時代の「知」とは マイケル・サンデル教授らが語る

友田雄大
【動画】サンデルセッション ポストコロナ時代の人類と社会〜いま考える「新しい知」
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 国際シンポジウム「朝日地球会議2021」(朝日新聞社主催)はオンラインで開催され、1日目の17日、パネル討論「ポストコロナ時代の人類と社会~いま考える『新しい知』」を配信した。ポストコロナ時代に求められる知とは何だろうか。米ハーバード大教授のマイケル・サンデルさんと青山学院大教授の福岡伸一さん。米国の政治哲学と日本の生物学の泰斗である2人が、キャスターの長野智子さんを交え、語り合った。

 サンデルさんは新著「実力も運のうち 能力主義は正義か?」で、コロナ禍ではっきりした社会的な分断の背景に、行き過ぎた「能力主義(メリトクラシー)」があると指摘する。

 サンデルさんは、格差の拡大や賃金の停滞に対する近年の不満の原因のひとつは、メリトクラシーにあると説明した。つまり「成功者は努力しているので、周囲を見下しても仕方ない」といった考え方が、分断を生んだという分析だ。

 福岡さんは、日本でも同じ問題があると応じた。受験のためには、小学生の頃から塾に行ったり、家庭教師をつけたりといったお金がかかる。高学歴の家庭は情報も集まりやすいため、子どもが高学歴になりやすい問題があると指摘した。

 サンデルさんはこの状況について、「考え方を変える必要がある」と言う。何年も受験勉強の重圧に耐えて成功した人は「自分の努力の結果なので恩恵を受けるのは当然」と考えがち。「運」の役割や、親、教師などから受けた恩を忘れると、入試がうまくいかなかった人への責任を思い起こす「謙虚さ」が失われる。これこそが人々の連帯が損なわれつつある原因であり、エリート校の合格者に謙虚さを取り戻してもらうため、教育制度を設計し直す必要があると訴えた。

 どんな改革が必要か。福岡さんは、学生がマークシートで点数を取るといった「スキル」に偏りすぎて、教養のあり方がひずんでいるという見方を示した。

 サンデルさんも「ただ正しい答えを求めるのではなく、重要な問いかけをしなさいと教える教育制度が必要だ」と述べた。具体例として、哲学においても「正義」の解釈には明確な答えがなく、人によって分かれることを紹介。「正しい答えを導くことではなく、正しい問いを発して他の人と推論、思考できることが必要だ」と強調した。

 福岡さんは「ポストコロナ」を見据え、文系と理系を統合した知が必要になると指摘した。サンデルさんもこれに賛同したうえで、コロナ禍では都市を封鎖すべきか、外出自粛を要請すべきかといった局面で、科学の情報に基づいて人間がどのように判断するかがまさに問われたと例示。「科学をパンデミックとどう闘うかという問題に生かすには、(人工知能アルゴリズムだけでなく)人間の判断も必要だ」と語った。

 対談を終えた福岡さんは「サンデルさんは哲学を大切にしている。若い人にも大事なサジェスチョン(示唆)になる」と振り返った。視聴者から質問も寄せられた。10代の女性から「日本が最も変えなくてはいけない考えは」と尋ねられた福岡さんは、「若い頃から自分の哲学を持てる教育」の実現に取り組んでいく必要性を改めて強調した。(友田雄大)

 ポストコロナ時代に求められる知とは何だろうか。ハーバード大教授のマイケル・サンデルさんと青山学院大教授の福岡伸一さん。米国の政治哲学と日本の生物学の泰斗である2人が、キャスターの長野智子さんを交え、語り合った。

 サンデルさんは新著「実力も運のうち 能力主義は正義か?」で、コロナ禍ではっきりした社会的な分断の背景に、行き過ぎた「能力主義(メリトクラシー)」があると指摘する。

 サンデルさんは、格差の拡大や賃金の停滞に対する近年の不満の原因のひとつは、メリトクラシーにあると説明した。つまり「成功者は努力しているので、周囲を見下しても仕方ない」といった考え方が、分断を生んだという分析だ。

 福岡さんは、日本でも同じ問題があると応じた。受験のためには、小学生の頃から塾に行ったり、家庭教師をつけたりといったお金がかかる。高学歴の家庭は情報も集まりやすいため、子どもが高学歴になりやすい問題があると指摘した。

 サンデルさんはこの状況について、「考え方を変える必要がある」と言う。何年も受験勉強の重圧に耐えて成功した人は「自分の努力の結果なので恩恵を受けるのは当然」と考えがち。「運」の役割や、親、教師などから受けた恩を忘れると、入試がうまくいかなかった人への責任を思い起こす「謙虚さ」が失われる。これこそが人々の連帯が損なわれつつある原因であり、エリート校の合格者に謙虚さを取り戻してもらうため、教育制度を設計し直す必要があると訴えた。

 どんな改革が必要か。福岡さんは、学生がマークシートで点数を取るといった「スキル」に偏りすぎて、教養のあり方がひずんでいるという見方を示した。

 サンデルさんも「ただ正しい答えを求めるのではなく、重要な問いかけをしなさいと教える教育制度が必要だ」と述べた。具体例として、哲学においても「正義」の解釈には明確な答えがなく、人によって分かれることを紹介。「正しい答えを導くことではなく、正しい問いを発して他の人と推論、思考できることが必要だ」と強調した。

 福岡さんは「ポストコロナ」を見据え、文系と理系を統合した知が必要になると指摘した。サンデルさんもこれに賛同したうえで、コロナ禍では都市を封鎖すべきか、外出自粛を要請すべきかといった局面で、科学の情報に基づいて人間がどのように判断するかがまさに問われたと例示。「科学をパンデミックとどう闘うかという問題に生かすには、(人工知能のアルゴリズムだけでなく)人間の判断も必要だ」と語った。

 対談を終えた福岡さんは「サンデルさんは哲学を大切にしている。若い人にも大事なサジェスチョン(示唆)になる」と振り返った。視聴者から質問も寄せられた。10代の女性から「日本が最も変えなくてはいけない考えは」と尋ねられた福岡さんは、「若い頃から自分の哲学を持てる教育」の実現に取り組んでいく必要性を改めて強調した。(18日に再配信)(友田雄大)