7月18日の夜、小学生と保育園児の子ども3人を寝かしつけた崎山華英さん(31)は、自宅のリビングで、スマートフォンを手に地元の千葉県旭市の市議会議員補欠選挙の開票状況を確認した。
「得票数 2932票」
無所属で挑み、当選した。「おめでとう」「決まったね」。友人たちから次々とSNSでメッセージが届いた。
夫は遅くまで開票所で立ち会い、選挙期間は友人のその友人まで頼った「手探りの選挙戦」に挑んだのにはいくつものきっかけがあった。
美容師の母と姉、祖母と暮らしていたが、12歳のときに母が病気で倒れ、入退院を繰り返した。進学をあきらめて高校卒業後に就職。給料の多くを入院費にあてる生活は、母が亡くなる22歳ごろまで続いた。
選挙は縁遠かった。友人に政治のことを話すのは「変な人と思われたら」と不安だった。周囲の大人たちからは「Aさんは知人だから投票する」「次に当選するのはBさんで決まっているらしい」と聞いた。選挙公報に書かれた候補者の主張を漠然と見て投票するものの、「自分の1票で何が変わるんだろう」と思っていた。
子育てするようになり、雨の日に子どもを連れて遊べる場所が少なかったり、小学生を預ける放課後児童クラブの開所時間が短かったり、不満はあった。ただ、行政のアンケートに改善してほしいことを書いても、あまり変化は実感しなかった。「不便でもルールだから仕方ない。みんなもどこかで妥協しているはず」とさえ思っていた。
転機は、コロナ禍だった。
シフト勤務だった職場で一時…