「彼らしく最期まで対峙したはず」 甲府火災、亡くなった男性の知人

藤野隆晃 浅野真
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 山梨県甲府市で住宅が全焼して2人の遺体が見つかった事件で16日、遺体は住人の井上盛司さん(55)と妻の章恵さん(50)であることがわかった。盛司さんの同級生の一人は「正義感が強かった」と振り返り、事件の詳細が明らかになることを望んでいる。

 市内の会社経営、後藤貴仁さん(56)は盛司さんと小中学校が同じだった。盛司さんは、幼い頃から剣道をしていて、中学生ながら身長が180センチ近くあった。「腕力があったけど優しくて、『武士道』という言葉の塊のような存在だった」と懐かしむ。

 2人は別の高校に進学した。小学校からの友人たちとも離ればなれになった。そんな時、友達同士の仲を保とうと努めたのが盛司さんだった。友人7~8人を自室に招き、部屋は授業や部活後に気ままに集まる「たまり場」のようになった。仲間たちは別の学校になったことに愚痴をこぼしていたが、盛司さんは「人生の一通過点なんだから頑張ろう」と声をかけていた。「教師みたいな、大人びた様子だった」

 12日、盛司さん方が全焼した。2人の娘はベランダから逃げたが、盛司さん夫婦が犠牲になった。山梨県警は、市内の少年(19)を次女への傷害容疑で逮捕し、放火や夫婦の死亡との関連も調べている。

 後藤さんは犯行の卑劣さに憤りを感じながら、「(盛司さんは)彼らしく最期まで対峙(たいじ)したと思う。最期までどう生きたのかを知りたい」と話す。

 今は無事だった娘2人のことが気がかりだ。「大人として、子どもたちに何かできたら」。そう考えている。藤野隆晃

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 甲府市で住宅の焼け跡から2遺体が見つかった事件で、遺体の身元判明から一夜明けた17日、甲府市蓬沢1丁目の会社員井上盛司さん(55)方には、白菊やカーネーションなどの哀悼の花束が手向けられていた。現場には今でも、住宅の焼け焦げたにおいが残る。時折、井上さん一家の知人が立ち寄り、花束を手向け、手を合わせていた。(浅野真)