福岡伸一さんらが議論 自分とは違う「他者」、どう向き合う?
国際シンポジウム「朝日地球会議2021」(朝日新聞社主催)はオンラインで開催され、1日目の17日、パネル討論「教育とケアから考え『利他』」を配信した。生物学者で青山学院大学教授の福岡伸一さんをコメンテーターに、東京工業大学未来の人類研究センター教授で「利他プロジェクト」に取り組む伊藤亜紗さんと、日本の学校教育に対してオルタナティブ(対案)を提案し続けてきた新公益連盟代表理事の白井智子さんが登壇した。
さまざまな人が暮らす私たちの社会。「多様性」「共生」という言葉があふれる中、自分と違う他者とどう向き合い、関わっていけばよいのか。障害を通して身体のあり方を研究する伊藤さんと、多様な子どもたちと接してきた白井さんがそれぞれの経験を踏まえて、他者との関わり方を議論した。
「利他」という言葉から、他者との関わり方のヒントになる多くの知恵が共有された。
障害を通して身体のあり方を研究してきた東工大・未来の人類研究センター長の伊藤亜紗さんは、周囲が先回りして様々なことをしてあげようとするあまり、障害のある人が「ずっと与えられる側で障害者を演じなきゃいけないという硬直した関係」になりがちだと指摘。「一見よさそうなことをするより、偶然の出来事を受けとめる『器』を自分の中にもつことが大事だ」と話した。
フリースクールで不登校の子らと向き合ってきた白井智子さんは、新型コロナによる一斉休校で、どうしようもない理由で学校に行けない気持ちを大勢が経験したと述べ、「システムに人が合わせるのではなく、いろんな子がいていろんな価値観があることを体現できる場所に教育の場がなっていくべきだ」と話した。
生物学者の福岡伸一さんは、「集団の中にうまく吸血できないコウモリがいると、過剰に吸った個体が吐き戻して分け与える。役割は固定しておらず、もらう側はいつか与える立場になりうる」と話し、自然界から人が学ぶべき利他行動を紹介した。(コーディネーター・鈴木暁子)