「恐れるな」と言う政府、がらがらの中華街 8割接種のシンガポール

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シンガポール=西村宏治
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 匂いが漂ってこない。それに、人影があまりにも少ない。歩きながら、そんなことが気になった。

 9月中旬、私はシンガポール中華街にあるチャイナタウン・コンプレックスに向かっていた。700にのぼる屋台や店舗がひしめく庶民の台所で、ふだんなら魚介や鶏や豚のスープ、炒め物のごま油の香りが周辺にまで漂う。

 コロナの集団感染が出て直前に3日ほど閉鎖されたが、再開しているはずだった。しかし、中に入ってみると人の気配がない。飲食店はほとんど閉まり、それ以外も数軒が開いているだけだった。

 話を聞こうと順番に回ってみたが、取材と分かると「うちは安全だよ」などと言われて話が進まない。ようやく「匿名なら」と応じてくれた店主(62)は、なぜ閑散としているのかとの問いに、ため息をついた。「みんな、怖がりすぎなんですよ」

 「私も家族もワクチンを打ったし、毎週、検査もしている。でも、みんな感染が増えると怖がって街に出ない。商売にならないから、店を開けないところも多いんです」。店主はそう続けた。

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感染者の98%が無症状か軽症

 シンガポールでは、8月の終わりまでに人口(約545万人)の8割がワクチンの接種を終えた。ほとんどが米ファイザー製か米モデルナ製だ。12歳以上の対象者に限ると9月初めに88%に届いた。

 だがデルタ株による感染が収まらない。新規感染は8月下旬の1日100人台から、10月上旬の3千人台に。日本の人口規模に引き直せば、7万人という規模である。

 それでも、保健省によると感…

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    朽木誠一郎
    (朝日新聞記者=医療、ネット)
    2021年10月21日11時35分 投稿
    【視点】

    いわゆる「ゼロコロナ」政策をとったシンガポールが今、どうなっているのかを書いたレポート。徹底的な行動制限による感染者の減少、規制緩和のタイミングで広がったデルタ株による再度の封じ込め、それによる市民の失望。希望となったワクチン、そして現在。