「虐待したんやろ」追及された1年3カ月 子は一時保護、苦しさ今も

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中塚久美子
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 児童虐待の疑いのある子どもの「これからの幸せ」は、誰が決めるのか――。子どもを守る最前線、児童相談所の一時保護を巡って見直しが始まっている。

 「寝返り、ハイハイ、離乳食、お正月……。数々の初めての場面に立ち会えなかった。どうやっても取り返せない」

 兵庫県明石市で、生後50日の男児が、1年3カ月にわたって児童相談所に一時保護され、親子別々の暮らしを余儀なくされた両親はこう悔やむ。

 「母親による身体的虐待だ」と主張して乳児院の入所を裁判所に申し立てた児相と、虐待を否定した両親。裁判所は「虐待は認められない」と判断し、市長が謝罪した。面会が月1~2回に制限され、1年以上の親子分離を招いた原因は何だったのか。再発防止策はあるのか。両親、県、市などの関係者の話から探る。

「虫刺され?」から「虐待」へ

 家裁の認定などによると、2018年8月、自宅で男児の右上腕部が少し腫れて固くなっていると気づいた母親は、仕事中の父親に連絡。その日のうちに、2人で病院に連れて行った。

 「虫刺されかな」。そう医師に言われたが、念のためにX線を撮ると、らせん状骨折と判明。その後、病院から通告を受けた県児相が男児を一時保護した。

 「抱っこしている時に、私が体のバランスを崩してベビーベッドの柵にあたった時かもしれない」

 保護後、母親は可能性のある原因を思い出し、児相に伝えた。しかし、児相側は母親が明確に説明できないことを「極めて不自然」とし、骨折理由が明らかにならないままでは男児の身の安全の確保ができるとはいえない、と親子分離の審判を裁判所に求めた。

 両親は偶発的なケガの可能性を示唆する整形外科医の意見書や、家庭環境に問題がないと述べる知人らの陳述書を出した。

 19年4月、新設された明石市の児相が県から対応を引き継いだが、方針を見直さなかった。その理由を、市児相の担当者は「ケガの理由が不明なままだったから」と取材に答えた。

 同年11月、大阪高裁が「虐待を加えて骨折を生じさせたと認めるには足りない」と認定し、男児は自宅に戻った。

後半では、男児が家庭復帰した両親が置かれた状況や苦悩を取材しています。虐待が疑われた子どもを一時保護する妥当性について、第三者の目を採り入れる動きについても紹介します。

母乳返され、男児は人見知り

 両親が、一時保護された男児に初めて会えたのは保護から5週間後。冷凍した母乳を届けたが、「衛生上の配慮」として後日面会時に返された。

 面会は、病院への付き添いを…

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