「人を気遣うゆえに我あり」ケアの現場を哲学で見る 大学教授が新著

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上原佳久
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 ある日突然、病気になったり、生活の手段を失ったり――。決してひとごととは言えない逆境に立たされた時、人は誰かの支えを必要とする。新著『ケアとは何か』(中公新書)を出した村上靖彦・大阪大学大学院教授は、哲学の視点で看護や福祉の現場を調査した経験から「人間は『独りでは生存することができない仲間を助ける生物』とも定義できるのでは」という。

 ケアと聞いてまず思い浮かぶのは、痛みを和らげたり、身の回りの世話をしたりといったことだろう。しかし、村上教授が看護師らにインタビューした調査からは、患者らの心に寄り添い、支えることがいかに困難かが見えてくる。

 たとえば小児がん病棟の看護師は、患者の母親から「なんでこの子、死ななきゃいけないんだろう?」と問われ、答えることができなかった経験を語る。

 「答えがないことは分かっていても、宛先(聴き手)が必要な問いです。できるのは、苦しみのただ中にある人と共にいることだけでしょう」

 専門は現象学という哲学の分…

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