松坂大輔ラスト登板 剛腕の面影なしも「逃げない。立ち向かう」 

遠田寛生
[PR]

 今季限りで引退する西武の松坂大輔投手(41)が19日、本拠で行われた日本ハム戦で現役最後の登板を果たした。打者1人を相手に5球を投げ、結果は四球、最速は118キロだった。2020年シーズンから西武に復帰した松坂は、首の痛みと右手のしびれを取るために同年7月に頸椎(けいつい)を手術。が、症状は改善せず、今年7月に引退を表明した。

 松坂は98年に横浜高で甲子園春夏連覇を達成し、ドラフト1位で99年に西武入り。06年オフに大リーグ・レッドソックスに移籍し、07年にはワールドシリーズで日本選手初勝利を挙げて優勝に貢献した。連覇した06、09年のワールド・ベースボール・クラシックでは2大会連続MVP(最優秀選手)を獲得している。

背番号18でマウンドへ

 この日のために変更された、慣れ親しんだ背番号「18」をまとった松坂がマウンドに上がる。試合開始が告げられ、松坂が振りかぶると場内が静まりかえる。この一瞬を目に焼きつけたい、といわんばかりに。

 2球目、ストライクをとると、静寂から一転、拍手が起きた。球速は118キロ。150キロを連発した剛腕の面影はもうない。右手に残るしびれの影響で制球がきかずに四球になったが、打者に向かう姿をようやくファンに披露できた。

 どん底だった4月の状態から戻ってもこられた。当時は投球練習で右打者の頭部方向にボールが抜け、「ボールを投げるのが怖くなった」という。最後は仲間に囲まれ笑顔になった。

 優秀な人材がそろう「松坂世代」の先頭を走るのは重圧との闘いでもあった。調子が悪く、登板するのが嫌で帰りたい日もあった。

 最終的には自分を奮い立たせて、投げた。「逃げない。立ち向かう。どんな結果も受け入れ、不利な状況もはね返してやる」。日米通算170勝の裏には、気持ちの強さがあった。

 試合後、感謝の気持ちを込めてグラウンドを1周した。帽子を片手にスタンドに向かっては手を振り、深々と一礼した。ファンはその度に拍手で迎えた。

 1周するとマウンドに向かい、投球板にかぶった土を払い右手を置いた。我慢していた涙が目に浮かぶ。もう戻ることはない。一つの時代が終幕を迎えた。(遠田寛生)