新型コロナ禍の中で行われる衆院選で、経済政策が注目されている。落ち込んだ経済をどうやって立て直すのか。与野党ともに大規模な財政出動と格差是正の分配政策を掲げており、対立軸が見えにくいとの指摘もある。有権者はどこに注目すればよいのか。
東京大学名誉教授・大沢真理さん 「ボトムから家計消費を高める方向に転換を」
――衆院選で有権者が注目すべき経済政策は何ですか。
「コロナ対策と、貧困や格差の拡大を抑制する具体策でしょう。いまは新規感染者数が減っていますが、多くのシミュレーションが示すように今後も感染の波は繰り返されるはずです。ワクチン接種や治療薬の開発が進んだとしても、新たな感染症の発生や蔓延(まんえん)が見込まれます。それらの時に備えた保健医療体制の拡充と、再分配機能の強化のあり方が争点になります」
「コロナの蔓延や自粛要請で経済がまひし、そのしわ寄せは相対的に恵まれていない人たちに集中しました。保健医療体制を脆弱(ぜいじゃく)にし、税と社会保障の再分配機能を弱めてきた、政府の長年の政策の帰結といえます」
――日本の再分配機能はそんなに弱いのですか。
「税と社会保障制度の所得再分配機能は、他の先進国と比べ非常に弱いです。端的にいえば、豊かな組織や人から貧しい人にお金が回らない仕組みになっています。例えば安倍政権では2回にわたり、生活保護の給付基準が引き下げられました。生活保護基準には就学援助や住民税の非課税基準も連動します。また、高齢化により年金や医療費の給付は増えますが、社会保障給付の総額はGDP比で減らされました」
「再分配機能の弱さは深刻な子どもの貧困につながっています。政府は、少子高齢化を『国難』とまで呼んできたのに、実態は子育て世帯にムチをふるうような政策を進めてきました」
――なぜですか。
「政治が無視してきたからで…