「投票に行こう」と言うよりも…読めば「投票に行きたくなる」小説

有料会員記事2021衆院選

聞き手・佐藤雄二
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 衆院選は31日に投開票されます。人文社会書籍出版社の編集長に、「投票に行きたくなる」小説を三つ紹介してもらいました。これを読むと、政治と私たちの暮らしとの関連に思いをはせ、投票に行きたくなるかも?

出版社の編集長が選ぶ「投票に行きたくなる」小説3選

名古屋の人文社会書籍出版社「風媒社」で1998年から編集長を務める劉永昇さんに選んでもらった「投票に行きたくなる小説」3選。2作は海外・東アジアの作品で、最後に登場したのはおなじみの名作でした。

 在日コリアンの私には選挙権がありません。ですから、自分が生活するこの国の投票には、一度も行ったことがありません。だからこそ、投票への渇望が強くあります。

 そもそもこうしたテーマを新聞社が考えるのは若者の投票率が低いからでしょうか。でも、やみくもに「投票に行け」と言うのはいかがなものでしょう。小言をいうより、「私は生(うま)れてからこのかた、まだ一度も国民として選挙権を行使したことがない」で始まる伊丹万作の「政治に関する随想」(ちくま学芸文庫「伊丹万作エッセイ集」所収)の一読を勧めます。漫然と投票しても権力の利益に加担するだけで国民の未来を良くすることはない、と作者は書いています。

 若者の無関心には理由があるはずです。自分ひとりの行動が国や社会を動かすという実感が持てないのかもしれません。でも日本からちょっと視線をずらし、同じ東アジアの国の小説を読むと、政治と生活が密接に関係している現実を知ることができます。政治を身近に感じられそうな作品を三つ紹介しましょう。

台湾が中国に宣戦布告? 戦後政治史のパロディー

 まずは台湾の短編小説「カピバラを盗む」です。ある日突然、台湾が中国に宣戦布告し、互いの出方をうかがう奇妙に平和な時間の中、主人公は仲間と一緒にサファリパークからカピバラを盗んでペットにします。ところが台湾はこれまた突然に領土と国民を「自由化」し、中国との二重国籍も可能にすると発表。のんびりしたカピバラとの共同生活が中断されるシーンで小説は幕を閉じます。

 台湾戦後政治史のパロディーで、現代を風刺した作品です。台湾は日本や中国との歴史的な関係の延長線上で、政治の足場が揺れ続けています。そこで生きる人々の姿が目に浮かび、私たちは認識を新たにするだろうと思います。

 次は、2019年に韓国で出…

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