テレワーク阻む「心理的要因」とは 組織論から考える改善策

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大坪実佳子
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 コロナ禍で進んだはずのテレワーク。でも、緊急事態宣言が明けると元通り、という職場もあるようです。

 仕事の特性上、テレワークの導入が難しい企業もありますが、それ以外にも普及を阻む心理的な要因がある――。「同調圧力の正体」などの著作があり、組織論に詳しい同志社大の太田肇教授はそう指摘します。

震度5強の翌日、出勤の行列

 ――首都圏で最大震度5強の地震が起きた翌朝、各地で交通が混乱し、多くの人が通勤のため列を作りました。こうした状況でも、在宅に切り替えたり休んだりしづらい人も多いようですが、組織論の観点からはどう捉えていますか。

 自由に切り替えられないのは、仕事内容より制度や管理が重視されているからだと考えられます。

 欧米企業はいわゆる「職務主義」のもと、個々人の役割が職務記述書に明記されており、役割を果たしさえすれば働き方はかなり本人の裁量に委ねられています。

 それに対し、日本では役割が不明確で、働き方が厳しく管理されています。日本企業でも、役割分担が明確なところや、営業など成果重視の職種では、働き方の自由度が高いケースがあります。

 ただ一般的にいうと、日本では共同体主義の風土が強く、個人の判断で働き方を決めさせると統制がききにくくなるのを危惧しているようです。

「仕事はみんなで会社で」

 ――何時間も電車を待つなら、その間に自宅で仕事をした方が効率が良さそうですよね。

 日本では「会社にいることが仕事」「仕事はみんなで会社でするものだ」という意識がまだまだ根強いと感じます。

 こうした風潮の中では、成果より負担や犠牲が重視されることがしばしばある。成果よりも出勤することに重きが置かれてしまうのです。

 私はこれを共同体主義と呼んでいますが、仕事だけでなく、人間関係や取引先との関係も全て含め、みんなで一緒にすることで安心感や承認欲求を得られる。

 テレワークになると、その安定状態が崩れるんです。長らく「みんなで一緒に」が正しいという大前提でしたから、コロナ禍でいわば「緊急避難」的に導入されたテレワークは浸透しづらいのでしょう。

 ――成果より負担や犠牲が重視されるというのは、どういうことでしょう。

 例えば、同じ仕事でも効率よく仕上げて定時に帰る人より、残業した人の方が管理職に評価されることがありませんか。

 業務上必要かどうかに関わらず、一律に転勤させたり、一般職よりも転勤や長時間残業を受け入れてきた総合職を昇進させたりするのも、背景には負担の不公平感を取り除くためという理由があります。

 日本の職場では、効率性と共同体の論理が複雑に絡み合っているため、テレワークの普及や働き方改革も中途半端になっています。

日本の企業ではまだまだ強い「同調圧力」。では、どうやったら変えていけるのでしょうか。後半では、「組織嫌い」だという太田教授が考える「個人の尊重」のあり方についてうかがいます。

役割と行動、切り離して

 ――どうしたら変われますか。

 役割と行動を切り離すことが…

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