「核のごみ」文献調査の地で町長選 「国策」にどう影響 北海道寿都

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伊沢健司
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 10万年にも及ぶと言われる「核のごみ」(原発から出る高レベル放射性廃棄物)の最終処分の問題が、人口2800人の漁師町にのしかかっている。処分場の選定に向けた全国初の「文献調査」が進む北海道寿都(すっつ)町で、町長選が21日に告示、26日に投開票される。1年前から調査応募を推し進めてきた現職と、中止を掲げる新顔の一騎打ちとなる見通しで、選挙結果が「国策」に大きな影響を与えそうだ。

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 国内の原発が動き始めてから半世紀以上経つなか、人口約2900人の漁業のまちで、初めて動き出した最終処分場の選定プロセス。トップが下した「政治的判断」に、町民の賛否は割れている。今月21日告示、26日投開票の町長選を前に、この1年の「核のごみ」をめぐる議論を3回にわたり追う。

 20日午後、日本海に面した寿都漁港の船着き場では大雨と強風の影響で漁船が揺れていた。秋サケの最盛期だがこの日は休漁。町内の人影はまばらだった。

 立候補するのは、6選をめざす現職の片岡春雄氏(72)と、前町議で新顔の越前谷由樹氏(70)。4回連続無投票だった町長選は20年ぶりの選挙戦となる見通しだ。文献調査の是非が最大の争点で、主張が真っ向から対立している。

 高レベル放射性廃棄物最終処分場は国内にない。国は受け入れる自治体を探してきたが、難航する中で、片岡氏は昨年8月に突然、候補地選定の第1段階にあたる「文献調査」への応募検討を表明した。

 処分場の選定プロセスは20年に及び、第1段階は既存のデータや論文を用いる2年間の文献調査、第2段階は実際に地面を掘る4年間の概要調査、そして第3段階の地下施設をつくる14年間の精密調査へと続く。

 自治体には文献調査中に最大で20億円、概要調査中に最大70億円が国の電源立地地域対策交付金から支払われる。片岡氏は人口減と新型コロナの影響で落ち込んだ地域経済を、この交付金で立て直そうと考えた。町営の風力発電で町の収入を伸ばした経験からエネルギー政策に関心を示し、宙に浮いた最終処分の問題に「一石を投じる」と主張。反対派の町民が応募前の住民投票を求めたが、「町民の賛否は肌感覚で分かる」と昨年10月に応募した。

 これに対し、新顔の越前谷氏は、文献調査への賛否で町内が割れている現状を解消することが最優先だとして、調査の中止を訴えた。片岡氏と町議会は第2段階の概要調査より先に進む際には住民投票をすると条例で定めたが、越前谷氏はそもそも第1段階の文献調査への応募前に実施すべきだったとも反論。「まず住民の声を聞くべきだ」とし、交付金に頼らない財政運営を掲げた。約55億円という町の一般会計の予算規模が他町村と比べて大きいと主張し、財政再建を進める考えだ。

 同じ後志(しりべし)地域の神恵内(かもえない)村も同時期に調査を受け入れ、北海道の2町村では、最終処分場事業を行う原子力発電環境整備機構(NUMO)による全国初の文献調査が行われている。

 第2段階以降に進むには地元の知事や市町村長の意見を聴く必要があるが、第1段階の文献調査への応募は地元の市町村長の判断でできる。北海道には核のごみの持ち込みを「受け入れ難い」とする条例があり、鈴木直道知事は応募に反対の姿勢だが、片岡町長は方針を変えなかった。

 地元住民の意見は真っ二つに…

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