台湾のオードリー・タンさん、コロナ対応やAI、多様性…存分に語る

コーディネーター・吉岡桂子
【動画】オードリー・タンさんが語った
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 国際シンポジウム「朝日地球会議2021」(朝日新聞社主催)はオンラインで開催され、4日目の20日、対談「台湾、デジタル、民主主義」を配信した。台湾デジタル担当政務委員のオードリー・タンさんがリモートで登壇した。トランスジェンダーを公言する天才プログラマーで、デジタル技術を駆使し、人々の声を拾い上げて迅速に対応する仕組みを作るなど、台湾の民主主義に多大な貢献をしてきた。台湾のコロナ禍への対応、AIと人間社会のかかわり、多様性の受け入れなどについて、考えを存分に語ってもらった。

 デジタル技術は人々をつなぐ場をつくり、共存を支える道具。設計し、使いこなすのは、私たち――。台湾のデジタル担当政務委員(閣僚に相当)のオードリー・タンさんが、デジタル技術と民主主義の共存のあり方について語った。政界での実績がないまま史上最年少で民間から登用され、新型コロナ対策にも貢献した「天才プログラマー」のメッセージは明瞭だった。

 「感染症対策で、これが絶対によいというものはない。ただ、市民自らが対策を考えると失敗しない」

 コロナ禍で、台湾は「上からの手段」としての緊急事態宣言ロックダウン都市封鎖)の措置をとらなかった。デジタル技術を駆使して民意をすくいあげ、政策にいかしている。

 「信頼しないと信頼されない。私の仕事は市民のよいアイデアを信頼し、社会に役立つ形で育てること」

 ネット上の「目安箱」とも言える政策提言サイト「join(ジョイン)」、日本のパブリックコメント制度に似た「v Taiwan」――。これらの仕組みに届いた指摘に、タンさんは耳を傾けた。そして自らが開発にかかわった濃厚接触者の追跡、ワクチン接種の予約といったシステムの改善に役立てた。

 「民主主義は投票行為だけではない。投票権がない若者を含めて誰でも政策への意見を毎日発言できる。デジタル技術は、その場を創造する手段でもある」

 キーワードは、シェア(共有)とオープン(開放性)。年齢や性別、職業や貧富にしばられず、議論に参加できる「場」をつくることに知恵を絞る。分断を超えた価値の共有を期待する。「多様性の重視だけでは初歩段階。包摂性が大切。心地良いところにとどまらず、なじみのない場での議論に参加し、異なる言葉に触れてほしい」

 政府内で財政を議論するなら、あえて異分野の官僚を調整・進行役に据える。立場にとらわれない会議にするためだ。高齢者層にデジタル技術を身近に感じてもらおうと、若者と同席して長期的なシステムのあり方を検討する場も設けた。

 「AI」の「A」は「Artificial(人工)」でも「Authoritarian(権威主義)」でもない。「Assistive Intelligence(支援する知能)」であるべきだと主張した。

 タンさんにとって、AIなどのデジタル技術は「人々に力を与え、つなぐもの」だ。中国のように、権威主義体制が設計した、権力を為政者に集中させる手段にはしたくない。政府は市民に説明を尽くし、プライバシー保護との両立を目指す。多くの市民の共感につながるような制度設計を心がけているという。

 権威主義から民主主義へ移行する時代の台湾で育った世代として、デジタル技術を民主主義の進化に役立てる覚悟をのぞかせた。

 台北からリモートでの参加だった。日本からのワクチン寄贈に感謝を示し、「日本政府と今後も緊密に協力したい。次はリアルで訪問したい」と述べた。(コーディネーター・吉岡桂子