インバウンドで沸いた空港まだ閑散 宿泊客ほぼゼロに今思うこと

井上正一郎
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閑散とした関西空港の国際線到着フロア=2021年9月30日午後3時48分、井上正一郎撮影
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 「非常に厳しい。一気に国の門が閉められたので」。

 大阪府豊中市阪急宝塚線庄内駅近くにある「ゲストハウス日本宿屋168」を営む井関敦子さん(57)は、「日本人と外国人の交流をもっと深めたい」と、夫で中国人の楊舒(ヤンシュウ)さん(53)とともに、コロナ前の2018年に営業を始めた。

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コロナ禍前、春節を祝う垂れ幕を掲げてアジアからの観光客を歓迎する関西空港の国際線到着フロア=2016年2月5日

 オープン当初の連休は、インバウンド訪日外国人客)の利用で八つある部屋が満室になるほど、にぎわっていたが、現在の宿泊客はほぼゼロ。井関さんは「しんどいと思ったこともあるが、ゲストハウス同士のつながりや、地元に貢献したいとの思いで踏ん張っている」と話す。コロナ禍で「府外から宿泊客を呼ぶわけにはいかない」と、現在インターネットでの予約を中止。利用客は1日最大2組に絞っている。「早く元に戻って欲しいが、現状では難しいと思う」と肩を落とした。

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ゲストハウスの食堂。コロナ対策として、机を離して配置している=2021年10月4日午後4時38分、ゲストハウス日本宿屋168、井上正一郎撮影
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コロナ禍で相部屋は1部屋1組で運用。二段ベッドは下側のみ使っていると話す井関敦子さん=2021年10月4日午後4時42分、ゲストハウス日本宿屋168、井上正一郎撮影

 関西の空の玄関口である関西空港も、厳しい状況が続いている。9月1日時点で、空港内の9割近い店が休業や時短営業をし、4階の国際線出発フロアは、ひっそりと静まりかえっていた。

 関空を運営する関西エアポートによると、9月の国際便は週50便ほどにとどまり、2021年3月期決算は、16年4月に国から運営を受け継いで以来、初めての赤字に転落した。

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チェックインカウンターの電気も消え、閑散とした関西空港の国際線出発フロア=2021年9月30日午後3時4分、井上正一郎撮影

 ただコロナ前は「インバウンド・バブル」とも呼べる状況だった。LCC(格安航空会社)の関空就航や、訪日ビザの要件緩和などにより、2011年以降、関空利用者は年を追うごとに増え、19年には約3192万人と過去最高を記録。そのうち、半数超の約1677万人が国際線を使う外国人だった。

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コロナ禍前、訪日外国人客らでにぎわう関西空港の国際線出発フロア=2018年6月7日午後0時34分

 国や大阪府・大阪市などもインバウンド向けに手をうってきた。観光案内の多言語化やフリーWi―Fi(ワイファイ)の増設などインフラも整備。18年6月には民泊も解禁され、19年のラグビーワールドカップ東京五輪、そして25年の大阪・関西万博へと、国際的なイベントも目白押しだった。そんな中、コロナ禍が世界を襲った。

 大阪観光局の担当者は、「これまではインバウンドに取り組みがかなり寄っていた。これからは量から質への転換を加速させなければならない」と話す。

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閑散とする関西空港の入国審査場=2021年9月30日午後3時48分、井上正一郎撮影

 大阪観光局では、今後、観光の少人数・小規模化が進むと予測。エリアごとに魅力の整理を行い、国内客も含め、府内を周遊してもらえるよう準備を進めている。ただ、移動制限が長引けば、コロナ後の観光を支える企業がいなくなってしまうのではないかとの危機感もある。担当者は「観光は旅行業者や宿泊施設だけでなく、それを支える生産者など裾が広い。金銭面の支援だけでなく、『Go To キャンペーン』のような政策も必要だ」と話した。

 ゲストハウスを運営する井関さんは、国からの一時支援金などを受けたが十分ではなく、夫は工場でのアルバイトを始めた。さらに、「コロナ後に多くの交流が生まれるよう、今は地域の人とのつながりを増やしていきたい」と、地元のNPO団体の活動に使ってもらう取り組みも進めている。

 出口の見えない現状に、井関さんは「再びインバウンド需要で活性化できるよう、安心して行き来できるようなコロナの感染症対策を国には打ち出して欲しい」と語った。(井上正一郎)

観光関連の国や自治体の支援策の例

○大阪いらっしゃいキャンペーン2021→府民が府内を旅行・宿泊する際、旅行代金の割引(最大5千円)や観光関連施設で使える地域クーポン券(最大3千円)を配布予定。観光消費の喚起が目的で、開始時期は調整中。現在、参加希望の事業者を募集している。

○経営力強化サポートプログラム→経営状況が悪化している宿泊事業者に対し、専門家による経営診断や研修を行う観光庁の支援事業。必要に応じ、多言語案内表示の導入など設備投資の補助(補助率3分の1、上限150万円)を行う