気象庁の記者会見、口元丸見え 透明マスク着用のわけは?

吉沢英将
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 地震や噴火などが起こった時に開かれる気象庁の記者会見で、壇上で警戒を呼びかける幹部のマスクが独特だ。透明なシートに覆われ、口元は丸見え。なぜなのか、事情を探った。

約30分くもらず

 「阿蘇山噴火警戒レベルを3に引き上げたことについてご説明します」

 20日午後1時、熊本県の阿蘇山が噴火したことを受け、東京都港区の気象庁で始まった緊急記者会見。噴火の概要を説明する火山監視課の尾崎友亮(ともあき)課長がつけるマスクは透明だった。約30分の間、マスクはくもることなく、口元ははっきりと見え続けた。

 マスクは市販のもので、シートにはくもり止め加工が施されている。会見の直前、記者会見室に隣接する広報室の職員が手渡した。10月から、大きな地震や豪雨などで開く緊急記者会見で説明を担う幹部につけてもらっているという。6日にあった岩手県沖を震源とする地震や、首都圏で最大震度5強を観測した7日の地震の会見でも用いられた。

 導入にあたった広報室の山本太基(たいき)・報道調整官に聞くと、「聴覚に障害を持つ人にも内容を正確に理解してもらうため」。口元の動きで話を理解する人たちへの配慮だという。透明なマスクにたどり着いた紆余曲折(うよきょくせつ)を教えてくれた。

わかりやすさ、感染対策……

 新型コロナウイルスが猛威を振るい始めた2020年、気象庁の幹部はマスクをつけて会見での説明にあたった。19年3月から手話通訳者も同席していたが、夏には「口元が見えないと内容がわかりにくい」という苦情が聴覚に障害がある人からメールで寄せられたという。

 広報室ではマスクを外してフェースシールドを装着することや、会見台にアクリル板を置くなどの対応を検討。ただ、会見室には多くの報道陣が集まる。いずれも飛沫(ひまつ)が広がるリスクがあるほか、アクリル板に光が反射して幹部の表情が見えにくくなる恐れがあり、見送った。

 「対応が難しく、どうすればいいか悩んだ」と山本さん。そんなさなかの今夏に見つけたのが、透明マスクだった。これなら飛沫も防げる。広報室では職員が実際につけて声が通るか試したうえで、導入に踏み切った。

 SNS上では「独特すぎる」といった声も上がる一方、「優しいな」「つけ続けてほしい」などと肯定的な意見が目立つ。山本さんは「緊急記者会見は、人の生死に関わる情報を伝える場。全ての人にまんべんなく危機感を伝えられるよう工夫を続けたい」と話す。(吉沢英将)