ショパンコンクール、一級のエンタメに 世界が見守った群像劇を解説

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編集委員・吉田純子
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 コロナ禍の第18回ショパン国際ピアノコンクールは、健康的な美しさにあふれたブルース・リウさん(カナダ)の演奏に栄冠を与えた。抜群の安定感を印象づけつつ、時に賭けのような思い切ったダイナミクスの解釈を入れ、予選を勝ち上がってきた。一転、本選の協奏曲は浮遊感と諧謔(かいぎゃく)たっぷり。くるくると表情を変えつつ楽しげに疾走する演奏は、音楽がこの世界にある幸福を存分に実感させてくれるものだった。

 今年は日本人の健闘も、とりわけ際だった。2位入賞の反田(そりた)恭平さんと4位入賞の小林愛実(あいみ)さんは、幼なじみ同士の仲良し。ファイナル直前の3次予選まで進んだ人気ユーチューバー、角野隼斗(すみのはやと)さんの出場も、大いに関心を集めた。反田さんとともに2位入賞を果たしたアレクサンダー・ガジェブさん(イタリア/スロベニア)と、ファイナルに残ったイ・ヒョクさん(韓国)は浜松国際音楽コンクールの覇者と3位入賞者として、日本でもすでになじみ深い存在となっている。

 コンクールに青春を賭ける若者たちの群像劇恩田陸さんの小説「蜜蜂と遠雷」を地で行くかのような、かつてなく華のある布陣がそろった。注目されないわけがない。

 役者のそろった筋書きのないドラマを、世界中の「観客」がリアルタイムで見守った。世界中の音楽ファンが一斉に「審査員」と化し、生まれたての演奏に触れた感興が膨大なコメントを生み、ネット上にあふれかえってゆくのはまさに現代の光景だった。

ショパン・コンクールは繊細さで多くの人に敬愛されている作曲家を冠に戴(いただ)くがゆえに、極めて保守的な傾向の強いコンクールといえます。今回の結果は彼らのキャリアにどう影響していくのでしょうか。

個性とは色合いが異なる音楽の核

 ひとつだけはっきり言えるの…

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